研究課題/領域番号 |
20K06791
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
山田 格 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 名誉研究員 (70125681)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CT像解析 / 全身薄切断面観察 / 胃内eDNA解析 |
研究実績の概要 |
①アカボウクジラ科(Family Ziphiidae)鯨類の胃が数室ないし10室をこえる小区画に分画されている状態と,背側並びに腹側の胃間膜を追究することにより彼らの複胃がどのように腹腔内に収まっているかを理解するため; a)国立科学博物館保有のオウギハクジラ属(Genus Mesoplodon)新生児標本の中から,冷凍保存されていたオウギハクジラ(Mesoplodon stejnegeri)とコブハクジラ(M. densirostris)の新生児各一頭について全身CT撮影を行い(2020年8月と9月),撮影像の解析を行っている. b)CT撮影の結果,固定状態が良好と判断されたコブハクジラ新生児については、さらに全身を凍結後薄切(1cm厚)して,断面写真を撮影し,CT像解析の補助としている。 ②研究期間中各地でストランディングの発生したオウギハクジラ(2020年9月:沼津市),コブハクジラ(2020年11月:宮崎市),イチョウハクジラ(M. ginkgodens)(2021年3月:鹿嶋市)について採取した胃の各部屋の内容物を抽出しeDNA解析を開始し,胃を校正する複数の区画内の生物相の解明を目指している.現状では,餌生物由来ではない原核生物のDNAが得られていることは確認できている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究経過では,当初構想に従ってCT撮影,全身薄切の作業は予定通り進捗している,ある程度予測できていたことではあるが,CT像の3D解析には難渋しており,CT像の解析に用いるDICOMビューワーの扱いにさらに習熟する必要がある.断面写真の解析に於いても背側並びに腹側胃間膜の追究に手間取っている. 複胃の区画ごとのeDNA解析は,予備的には予測以上によい結果が得られている可能性があり,今後の解析が待望される.
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今後の研究の推進方策 |
①胃の配置の理解のため,CT像と薄切標本の作製をおこない解析を奨めているが,今年度は直接解剖を奨めることにより,腹腔内間膜の配置の把握を正確に行い,胃を含む消化管の発生過程を明らかにし,アカボウクジラ科鯨類の消化管の特異性の理解を深めたい. ②胃内区画ごとのeDNA解析を奨め,各区閣内生物相の把握をすすめる.現在のところ,それぞれの個体が捕食したと考えられる餌生物由来ではない原核生物のDNAが得られていることは確認できており,これらが,どのような生物であるかを把握したい. ③研究結果をわかりやすく紹介する展示のため,調査に用いている胃のプラスティネーション標本作成を計画しているので,これに向けた標本調整も開始する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19感染状況によって,標本収集の機会が十分に得られず物品費,旅費,謝金はいずれも予定通りの支出はできなかった.一方,ストランディング個体の調査と標本収集には想定以上の支出を強いられた.2021年度には,この状況を鑑み,ツチクジラ一個体分程度の標本収集を行うにとどめ,解析に注力することとする.
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