研究課題/領域番号 |
20K06793
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪 |
研究代表者 |
長谷川 匡弘 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 学芸員 (80610542)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Pollination ecotypes / 生態的種分化 / 訪花昆虫相 / マルハナバチ |
研究実績の概要 |
本研究では、送粉ネットワークの中心となる訪花昆虫種の欠落が、植物の送粉者シフトを伴う生態的種分化を引き起こす、という仮説を屋久島高地において検証する。具体的には、屋久島高地において、系統的に異なる複数種の送粉生態を調査するとともに、花形態や訪花者への報酬等の違いを本土の近縁分類群と詳細に比較することで、これらの植物で並行的に、マルハナバチとは異なる送粉者への適応が起こっていることを示す。 2021年度は、1)鹿児島大学、鹿児島県立博物館において標本調査を行うとともに、2)現地踏査により、調査地を確定すること、また、3)これまでにある程度生育地が判明しているノギラン、ツクシゼリ、ヤクシマコオトギリの3種については初年度からビデオカメラまたは目視による訪花昆虫調査を開始することを予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、予定していた現地調査及び標本調査ができなかった。このため、昨年度に引き続き過去に撮影したヤクシマシオガマの動画を解析し、訪花昆虫の同定を行った。この結果、ヤクシマシオガマでは、花サイズにマッチした有効と考えられる訪花昆虫がほとんど訪花していないことが明らかとなった。2022年度は、この結果をもとに、さらに訪花昆虫調査を屋久島高所の複数の地点で実施するとともに、近縁分類群であるハンカイシオガマ、イワテシオガマの訪花昆虫調査、花形態に関わる調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、1)標本調査を行うとともに、2)現地踏査により、調査対象となる植物、比較対象となる近縁種の分布状況を確認し、調査地を確定すること、また、3)これまでにある程度生育地が判明しているノギラン、ツクシゼリ、ヤクシマコオトギリの3種については初年度から ビデオカメラまたは目視による訪花昆虫調査を開始することを予定していたものの、新型コロナウィルス感染症拡大のため、予定していた現地調査及び標本調査ができなかった。このため、本研究の進捗に関しては「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、引き続き必要な研究機器を購入するとともに、2021年度に実施予定だった標本調査を行うとともに、ヤクシマシオガマの送粉生態調査を行う。また、その近縁種であるイワテシオガマ、ハンカイシオガマに関して、訪花昆虫調査、花形態の計測等を実施する。2020年度から開始予定であったノギラン、ツクシゼリ、ヤクシマコオトギリの調 は、2022年度は、屋久島高地での開花状況を確認するにとどめ、本格的な調査は2023年度より開始する。なお、新型コロナウィルス感染症拡大による緊急事態宣言等の発出により、現地調査が不可能となった場合は、web上で公開されている標本情報を収集するとともに、鹿児島大学の研究協力者に依頼し、標本情報を入手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、主に調査機材、調査に用いる消耗品の購入、調査旅費に使用する予定だったが、新型コロナウィルス感染症拡大のため、現地調査及び標本調査が全くできなかった。このため、撮影機材の一部を購入したのみにとどまり、次年度使用額が生じた。2022年度も新型コロナウィルス感染症は収束したわけではなく、現地調査がどこまで実施可能か不透明だが、残額は、屋久島、東北地方、関東地方などでの現地調査、鹿児島県における標本調査のための旅費、消耗品費、データ整理のための人件費に使用予定である。
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