本研究は、様々な程度に寄生生活に適応した多くの種を含む等脚目甲殻類を用いて、自由生活性等脚類から寄生性等脚類への進化の道筋と寄生生活に適した形態の適応的意義について明らかにすることである。特に寄生性等脚類の中で様々な群の出現に着目して付属肢と眼の形態やそれらの有無、体節の癒合状態などの形態と寄生場所の選択や転換および宿主の選択などの生態学的特性と合わせて議論を展開する。特定の分類群の分類学的研究を通して寄生虫学全体に貢献しようとする研究課題である。 本研究では等脚目の系統分類学的研究を通して、自由生活からどのようにして外部寄生や内部寄生に至ったのか、そしてその中でどんなイベントが起こったのか、さらにそれは寄生虫全体に当てはめることができるのかを明らかしようとする。2021年度は全国の博物館施設等で標本調査、調査船を使った採集調査を行う予定であったが、新型コロナ感染拡大防止のため、一部は中止・延期となった。そのような中、昨年同様に人数制限を行った上で11月に三重大学附属練習船勢水丸で調査航海を実施した。調査海域は熊野灘でドレッジによる底質採取を行った。採集調査により多くの十脚目甲殻類を得たがカニ類の鰓腔内に寄生するエビヤドリムシ類をそれぞれ雌雄のペアで採集することができた。また、和歌山県白浜周辺の調査でヤドカリ類とエビ類の鰓腔内に寄生するエビヤドリムシ類の1ペアをそれぞれ得ることができた。研究期間は終了したが、現在も研究を続行中である。
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