研究課題/領域番号 |
20K06798
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
池田 啓 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (70580405)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィトクロム / 種分化 / 光受容体 |
研究実績の概要 |
本課題では植物が持つ光受容体が植物の種分化に関わるかを検証することを目指している。特に,全ての陸上植物が持つフィトクロムに注目した研究に取り組んでいる。本年度はこれまでに作成したミヤマタネツケバナとCardamine bellidifoliaのフィクロム(PHYB)を形質転換したシロイヌナズナ,及びミヤマタネツケバナとCardamine bellidifoliaを用いた生理学実験を行った。フィトクロムの生理活性は赤色光によって誘導されるため,赤色光の強さや赤色光を照射する時間,温度を操作した実験を行い,それぞれの種が持つアミノ酸配列の異なるPHYBは,弱い赤色光や温度に対する応答性が異なり,Cardamine bellidifoliaのphyBの方がフィトクロムの生理活性が弱くなる状態(弱い赤色光,高温)において,強い生理活性を維持できることを明らかにした。また,蛍光タンパク質(GFP)で標識したphyBタンパク質を用いて,それぞれの種に由来するphyBタンパク質の細胞内局在を観察し,Cardamine bellidifoliaのphyBの方が,細胞内においても生理活性を持った立体構造を長く維持できることを明らかにし,phyBの環境感受性が生理応答を制御する原因であることを示した。これら一連の成果をまとめた論文を投稿し,年度に受理されることができた。 その一方で,シロイヌナズナの形質転換体などを用いた生理学実験と並行し,フィトクロム以外に種分化に関連する可能性がある遺伝子を探索することを進めた。本年度は,ゲノムワイドな多型を探索するためのデータを得るために,ヤマタネツケバナとCardamine bellidifolia を材料にRNAseq解析を行った。そして,ゲノムワイドな遺伝子の進化様式を解析する予備的な解析を実施し,解析の方向性を定めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定よりも速やかに結果がまとまり,論文を発表できた。また,NGSのデータ解析が当初の計画よりも進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の生理学実験によって,phyBの違いが開花特性にも関連することを示すデータも得てきた。本年度はこの部分を確認する実験を追加し,phyBと開花特性との関連性の有無を明らかにする。また,RNAseq解析の結果を解析し,フィトクロム以外に種分化に関わる可能性がある遺伝子の有無を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
納品のタイミングなどにより次年度に繰越した。速やかに執行する予定である。
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