研究課題/領域番号 |
20K06800
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
志賀 靖弘 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (00277253)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 甲殻類 / 背甲 / 遺伝子発現 / ゲノム編集 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
本研究は、W.T.Calman によって提唱された「背甲は甲殻類の系統における原始的な構造物である」という仮説を、オオミジンコをはじめとした複数種の甲殻亜門生物における「背甲形成関連遺伝子」の分子発生生物学的解析により、総合的に検証することを最終目的としている。 これまでに研究代表者は、「オオミジンコの背甲は、Hoxタンパク質 SCRが特異化する第1・第2小顎体節由来で、融合した背板は含まず、VG/SD/wgが共発現する周縁部で折りたたまれ伸張する」ことを明らかにした。もしCalmanの仮説が正しく、甲殻類が有する全ての背甲が単一起源を持つ原始的な構造物であるならば、これら4つの主要な遺伝子の発現様式はアメリカカブトエビやアメリカザリガニの背甲形成時においてもオオミジンコと同様であることが予想される。また進化の途中で背甲を失った可能性が示唆されているブラインシュリンプにおいて、これらの遺伝子がどのような発現様式であるのかを解析することで、背甲の進化と退化に関して、より詳細な考察が可能となることが期待される。本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)ブラインシュリンプにおけるwg mRNAの発現様式をin situ hybridizationにより解析した。オオミジンコにおいて背甲が形成される第1・第2小顎体節におけるブラインシュリンプ wg mRNAの発現は腹側に限局し、背側まで伸張しないことを明らかにした。この結果は、甲殻類の背甲形成において、背甲周縁部におけるwg遺伝子の発現が必須であることを示唆する。 (2)ブラインシュリンプ VG タンパク質に対する特異抗体の作製。大腸菌で発現した組み替えブラインシュリンプVGタンパク質をラットとモルモットに免疫し、このタンパク質に対する特異抗体を得た。現在は抗体のアフィニティー精製を進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度のコロナ禍に伴う非常事態宣言発令により大学研究室への出勤が数ヶ月間に渡り大幅に制限され、また予定になかったオンライン講義やオンライン実習への対応のために、本来本研究課題の遂行に費やすはずだった時間を減らさざるを得なかった。これらの影響で本研究課題の進捗にやや遅れが生じてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 各種甲殻類における主要背甲形成遺伝子の発現パターンと機能の解析 今年度に引き続き、主要な4種の背甲形成関連遺伝子の各種の甲殻類における発現様式の解析を継続し、これらの生物の背甲でも「SCRによって特異化される体節で形成され、周縁部では VG/SD/wg が共発現しているか」を検証する。既に作製済みの抗ブラインシュリンプVG抗体、抗アメリカザリガニSCR抗体、抗アメリカザリガニSD抗体によりブラインシュリンプおよびアメリカザリガニ胚の免疫染色を行う予定である。またオオミジンコ以外の甲殻類生物においてもCRISPR/Cas9によるゲノム編集系の開発と主要な背甲形成関連遺伝子の機能解析を目指す。
(2) オオミジンコにおける下流背甲形成関連遺伝子の同定と機能解析 オオミジンコ背甲形成に関わる分子機構の詳細を理解するために、上記した4つの主要な背甲形成関連遺伝子をCRISPR/Cas9によるゲノム編集によりノックアウトすることを試みる。またこれらのノックアウト胚内とオオミジンコ野生型胚内における遺伝子発現様式をRNA-seqにより詳細に比較する。背甲形成関連遺伝子のゲノム編集によるノックアウト後に発現量が変化(増加/減少)した遺伝子は下流の標的遺伝子である可能性があるため、これらの候補遺伝子の発現パターンや機能を同様に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度のコロナ禍に伴う非常事態宣言発令により大学研究室への出勤が数ヶ月間に渡り大幅に制限され、またオンライン講義やオンライン実習への対応のために、本来本研究課題の遂行に費やすはずだった時間が減少した。これらの影響で本研究課題の遂行にやや遅れが生じており、同時に購入予定だった試薬費、物品費、および抗体作製費の使用が滞った。2021年度にはこれらの遅れを取り戻すべく本研究課題を遂行しつつあり、2020年度に生じた次年度使用額は、2021年度末までには使用する予定である。
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