研究課題
昨年度までの解析でCutaneotrichosporon cavernicola(Trichosporonales目、担子菌類ハラタケ亜門)菌群の中では、種の同定のマーカー配列として用いられるITS領域の配列が同一であっても、染色体構造が大きく異なる株(HIS471)が存在することがわかった。同様の多様性が他の分類群にもみられるかどうかを確認するため、既に種間ハイブリッドの存在が報告されている子嚢菌酵母 Saccharomyces 属および担子菌酵母Cryptococcus属のゲノム情報を用いて比較解析を行った。その結果、ITS 配列、全ゲノム配列、染色体構造の多様化のバランスが、それぞれの属内で大きく異なっていることを見出したため、論文として発表した。Cutaneotrichosporon属を含むTrichosporonales目では未だ有性世代の報告はないものの、ゲノム情報から交配型遺伝子座を有することは報告されている。C. cavernicola菌群についても交配は未確認の段階であるが、交配型遺伝子座を調べたところ、供試株5株のうち、染色体構造が異なっていた株HIS471のmating typeが他の4株と異なっていた。本菌群に存在するゲノムサイズの大きい株は両方の型を有していることは、過去に交配もしくは細胞融合によってゲノムの倍加が起こったことを示唆しているため、現在はこれを実験室内で再現することを目指し、各種条件下で菌株を共培養し、交配によって表出すると考えられる細胞形態やゲノムサイズの変化を観察している。染色体レベルのゲノムデータと株の両方がそろった本菌群は今後種内多様化や種分化研究のモデルになる可能性があると期待している。
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BMC Genomics
巻: 24 ページ: 609
10.1186/s12864-023-09718-2