研究課題
本研究プロジェクトの目的は、以下の4点に集約できる:①きのこ類複数種の国内における分布の北限・南限を明らかにする;②分布推定域内における土壌中の対象種DNAの検出率の差異を検証する;③種内の遺伝的多様性から分布の北上(南下)を考察する;④博物館をハブとする微生物の市民参加型調査の先例をつくる。以上に基づき、2023年度の研究計画は、対象種のうちサンプル数が一定の基準を超えたものついてSNPsおよびその他系統解析を行い、分布拡大のパターンを明らかにすることであった。日本国内において分布の北限(および南限)があると考えられる、もしくは特異的な分布様式をもち、かつ多数の協力者によりその発生が容易に観察できると考えられるきのこの対象種を選定した結果、文献情報、新聞・ニュース等のメディア報道、ネーチャーガイド等からの目撃情報およびSNSを通じた情報の確保が可能な、カエンタケを対象種のひとつとした。また、環境省レッドリストで掲載種の多い、ニンギョウタケモドキ科についても複数種を対象とし、サンプリングを勧めた。カエンタケについてはDNAバーコード領域である核ITS領域の塩基配列に基づき1次スクリーニングを行い、選択した57サンプルをMIG-seq法により解析した。その結果、日本全国に広く発生するカエンタケは遺伝的に近縁な個体群からなる一方で、埼玉県の少数個体については別種である可能性が示唆された。ニンギョウタケモドキ科については、これまで日本から報告されている9種に加え、少なくとも3種が未記載種である可能性が示唆された。きのこ類のように発生が不規則でかつ短期間であるような生物においては、発生状況や分布の変遷を明らかにするうえで多数の調査員による観察が不可欠である。そのため本課題で取り組んだSNSの利用を含む、市民科学的な手法を活用することが今後も必要になってくると思われる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (14件) 図書 (1件)
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