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2021 年度 実施状況報告書

進化動態理論の統合による自然選択の複合的理解:進化ゲーム・血縁・繁殖価を軸として

研究課題

研究課題/領域番号 20K06812
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

大槻 久  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50517802)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード分散 / 進化 / 血縁度 / 進化ゲーム / 分断化淘汰 / 変動環境
研究実績の概要

本年度は昨年度の理論的成果を具体例に応用し、生物の移動分散の進化の解明に取り組んだ。より具体的には、環境が時間的にも空間的にも変動する場合にどのような分散率が進化するかを調べた。モデルとしては古典的なパッチモデルを用い、パッチの環境収容力やそのパッチにおける個体の繁殖力などの性質がパッチ間で異なり、かつ、それらの性質があるマルコフ連鎖に従って時間的にも変動すると仮定した。そしてこれらの仮定の下で、進化の結果として達成される分散率、および分散率に分断化淘汰が働いて分散率の多型が生じる条件を求めた。
従来の知見では、パッチ間に空間的な環境異質性がある場合は異質性がない場合に比べて分散率の進化が抑制されることが知られていた。しかしながら今回の解析の結果、パッチの性質が時間変動する場合には必ずしもこの結果は成り立たず、むしろ空間的な環境異質性が分散率の進化を促進することが分かった。今回得られた結果は、生物の移動分散の理解のためにはある時刻の瞬間においてどれだけ環境に異質性があるかを観察するだけでは十分でなく、時間軸に沿って環境がどのように変わっていくかを観察する必要があることを示唆する。
また、分散率の多型が生じる条件を調べるため、adaptive dynamics理論を用いて進化的分岐条件を調べ、さらにコンピュータシミュレーションも行った。その結果、環境の時間的変動が激しくその度合がある閾値を超えた場合にのみ分散率の二型が生じることが分かった。生じる二型は、ほぼ分散せず生まれたパッチに留まるタイプと非常に高い確率で出生地から分散するタイプの二つであった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画の通り時空間変動環境下での分散率の進化という課題に着手し、モデル構築から解析までを進め、従来知られてこなかった結果を含む一定の成果を挙げることができたから。

今後の研究の推進方策

分散率の進化モデルのさらに詳細な解析を進め、個体が分散の意思決定に(1)パッチ環境の情報を使えない場合と(2)パッチ環境の情報を使える場合とを比較しその差異について検討するとともに、得られた結果を繁殖価の観点から再分析し、結果の直観的な説明を試みる。これらの成果を取りまとめ学術誌に投稿し、掲載を目指す。

次年度使用額が生じた理由

参加を予定していた国際学会が延期となったから。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] トゥルク大学(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      トゥルク大学

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公開日: 2022-12-28  

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