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2021 年度 実施状況報告書

宿主巻き貝-吸虫類寄生虫系に注目した干潟生態系への気候変動影響の評価

研究課題

研究課題/領域番号 20K06819
研究機関国立研究開発法人国立環境研究所

研究代表者

金谷 弦  国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主幹研究員 (50400437)

研究分担者 伊藤 萌  国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 特別研究員 (20772817)
中井 静子  日本大学, 生物資源科学部, 助教 (40582317)
三浦 収  高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60610962)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード二生吸虫 / 干潟 / 底生動物 / 巻き貝 / 緯度間変動 / 生態系機能
研究実績の概要

寄生虫は宿主の行動、代謝や成長を変化させ、個体群動態をコントロールする。本研究では、干潟で優占する巻き貝ホソウミニナ(二生吸虫の第一中間宿主)に注目した。二生吸虫はホソウミニナの繁殖能力を奪い、ホストを巨大化させて自身のセルカリア幼生を生産し、毎日大量の幼生を水中へと遊出する。本研究ではまず、九州~北海道までの広域現地調査によって各地のホソウミニナ個体群における感染率と吸虫類の種組成を調べ、次に室内実験によって感染がもたらす宿主の代謝変化と、セルカリア幼生遊出速度の温度依存性を調べることとした。

2021年度は、前年度に調査を行った12地点(香川県~青森県陸奥湾)に加え、北海道南西部、三河湾、和歌山県、瀬戸内海、九州および対馬を含む32地点でサンプリングを行った。各地点で100~500個体程度採取したホソウミニナを生かしたまま実験室に持ち帰り、殻を割って実体顕微鏡下で吸虫による感染の有無を確認し、形態による種同定をおこなった。その結果、40地点で9種の吸虫類が確認され、地点あたりの最大出現種数は6種であった。高知県の須崎および長崎県対馬の計4地点では吸虫の感染が認められなかった。44地点での平均感染率は37%であり、緯度と感染率および吸虫類の多様性の間には有意な正の相関が認められた(p < 0.001および p < 0.05, n = 44)。

吸虫類の感染率について、東京湾以西の海域では多くの場所で感染率が20%以下であったが、仙台湾以北では感染率が50~100%に達する個体群が多く見られるようになった。感染によってホソウミニナは繁殖が出来なくなるため、感染率の高い個体群ではホストの個体群動態が二生吸虫による影響を受けている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年度は前年度よりも高頻度・広範囲でホスト巻き貝のサンプリングを行うことができ、予想していた感染率と寄生虫多様性の緯度間変動(高緯度ほど感染率が高く、多様性も高い)の傾向が検出できたことから、概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

次年度は瀬戸内海や北海道東部などでサンプリング地点を増やし、広域的な解析を行う予定である。また、宿主の代謝変化(ろ過摂食速度の変化)と水温-セルカリア幼生の遊出速度の関係を調べる室内実験についても、実施する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍で現地調査を予定よりも縮小したこと、また他の研究課題における調査と合わせた形で野外調査を行った結果、旅費の支出が低く抑えられた。また、室内実験についても次年度以降に実施することとしたため、実験用の試薬や器具等に関する支出が想定を下回った。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] The mitochondrial genome of the threatened tideland snail <i>Pirenella pupiformis</i> (Mollusca: Caenogastropoda: Potamididae) determined by shotgun sequencing2022

    • 著者名/発表者名
      Kato Shintaro、Itoh Hajime、Fukumori Hiroaki、Nakajima Nobuyoshi、Kanaya Gen、Kojima Shigeaki
    • 雑誌名

      Mitochondrial DNA Part B

      巻: 7 ページ: 632~634

    • DOI

      10.1080/23802359.2022.2060143

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 松島湾櫃ヶ浦で発見されたウミニナBatillaria multiformisの卵塊2022

    • 著者名/発表者名
      金谷弦、伊藤萌
    • 雑誌名

      みちのくベントス

      巻: 6 ページ: 47-51

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 宮城県野生動植物調査会・海岸動物分科会による2021 年度ベントス調査の結果2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木孝男、金谷弦、柚原剛、木下今日子、多留聖典、阿部拓三、太齋彰浩
    • 雑誌名

      みちのくベントス

      巻: 6 ページ: 2-20

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Philophthalmus hechingeri n. sp. (Digenea: Philophthalmidae), a Human-Infecting Eye Fluke from the Asian Mud Snail, Batillaria attramentaria2022

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Mizuki、Miura Osamu、Nakao Minoru
    • 雑誌名

      Journal of Parasitology

      巻: 108 ページ: 44-52

    • DOI

      10.1645/21-69

    • 査読あり
  • [学会発表] 北限の生息地陸奥湾における希少種ウミニナの個体群動態:成長量と温度環境2022

    • 著者名/発表者名
      金谷弦、むつ市立川内小学校5年生、山田勝雅、五十嵐健志
    • 学会等名
      日本生態学会第69回全国大会
  • [学会発表] 干潟の巻貝ウミニナとホソウミニナの濾過速度における温度の影響2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤萌、金谷弦
    • 学会等名
      日本生態学会第69回全国大会
  • [学会発表] 岩手県沿岸の干潟ベントス群集の特徴-東日本大震災後の環境省調査データを用いた時空間変動解析-2021

    • 著者名/発表者名
      金谷弦、鈴木孝男、多留聖典、松政正俊、青木美鈴、井上隆
    • 学会等名
      2021年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会自由集会
  • [学会発表] カゴ実験によるウミニナの地域間成長比較2021

    • 著者名/発表者名
      伊藤萌、木村妙子、三浦収、山本智子、五十嵐健志、山本康平、中井静子、金岩稔、増渕隆仁、金谷弦
    • 学会等名
      2021年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
  • [学会発表] 小友浦におけるベントス群集の長期変化.「埋め立てられた重要湿地:津波で干潟に回帰した小友浦に形成されていたベントス相2021

    • 著者名/発表者名
      阿部博和、菅孔太朗、松政正俊、鈴木孝男、木下今日子、金谷弦
    • 学会等名
      2021年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会自由集会
  • [学会発表] 小友浦の干潟から得られたNeoamphitrite 属(環形動物門フサゴカイ科)の1未記載種2021

    • 著者名/発表者名
      菅孔太朗、阿部博和、佐藤正典、松政正俊、金谷弦、鈴木孝男
    • 学会等名
      2021年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会自由集会
  • [学会発表] 三陸の礫干潟・小友浦の軌跡と現在.「埋め立てられた重要湿地:津波で干潟に回帰した小友浦に形成されていたベントス相2021

    • 著者名/発表者名
      (4)松政正俊、阿部博和、菅孔太朗、木下今日子、柚原剛、村山恒也、日高裕華、多留聖典、金谷弦、鈴木孝男
    • 学会等名
      2021年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会自由集会

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公開日: 2022-12-28  

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