本研究はDNAメタバーコーディングと画像解析技術を組み合わせた昆虫群集のモニタリング手法をを開発することを目的として実施した。研究期間を通してi)昆虫画像の分類手法の開発・性能評価およびii)DNAバーコーディング配列の分類手法の開発・性能評価をおこなった。
i)では機械学習による画像解析の手法の開発と評価をおこなった。共同研究者から提供された土壌コアサンプルの昆虫の画像の分類をおこなった。深層学習の画像分類は、バルク状態(標本のように整列されていない状態)の昆虫サンプル写真の分類において、科レベルでの分類が95%程度の正解率でおこなえることがわかった。この深層学習の分類精度は概ねこの研究で求められる水準の正確さを満たすことができた。また画像の品質や撮影方法・トレーニングデータのデータベースの違いの影響を検証した。以上の結果はFujisawa et al. 2023 Systematic Entomologyとして発表した。
ii)ではメタバーコーディングデータによって得られた配列データの種レベルの同定を行うための深層学習モデルを実装した。また従来のサンプルの同定に加えて未知の種(配列データベース内に存在しない種)を検知する手法を検討した。その結果深層学習モデルの配列データの同定は極めて正確であること(98%程度の正解率)、またノイズなどに対して頑健であること、一方で未知の種の発見は既知種の同定より困難な状況があることなどがわかった。これらの結果を論文としてまとめ投稿準備中である。
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