研究課題/領域番号 |
20K06827
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山田 俊弘 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (50316189)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 個体群生態学 / 推移確率行列 / 熱帯雨林 / 見かけの動態 / 真の動態 |
研究実績の概要 |
樹木の個体群動態研究では、生残率が測定間隔に依存して薄められてしまうリスクを伴う。例えば、5年に一度だけ大干ばつが起こり、この年だけ死亡速度が急激に上昇したとしよう。この場合、毎年データを取っているならば問題ない。真の動態をつかみ取れるだろう。しかし、データを5年間隔でとっていた場合、この干ばつの効果は、5分の1に薄められることとなる。しかし、この効果がどれだけの大きさをもつのかについて検討されたことは無い。本研究課題は、これまでの植物個体群動態研究の知見に立脚し、それまで誰も考えたことの無かった生存率の希釈、つまり、見かけの個体群動態に関する問題に対峙する。 本研究課題は、熱帯樹種の個体群に関する研究で、調査は、マレーシア国ヌグリスンビラン州パソ保護林とマレーシア国サラワク州ランビル国立公園で行う予定であった。2020年度は、マレーシア国ヌグリスンビラン州パソ保護林とマレーシア国サラワク州ランビル国立公園で大規模調査区内の調査対象個体を選び出す作業を行う予定としていた。 しかし、昨今のコロナウイルス感染拡大に伴い、渡航を伴う海外での調査が実施不可能となった。そこで、2020年度は、あらかじめ用意していたプランBを実施することで、渡航ができなくても研究を進めることができた。 調査対象としている森林では現在、5年間隔での森林観察が実施されている。これを用いれば、見かけの動態は再現できる。プランBでは、先行研究に記載されている旱魃時の生残率の値を利用して個体群推移行列を作成し、真の動態をシミュレートし、見かけの動態と比較することで、希釈の効果を検証することとしていた。この非常時のバックアッププラン(プランB)を用いることで、2020年度も研究を進めることができた。 結果として、希釈の効果の概要を数値的に示すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨今のコロナウイルス感染拡大のため、渡航を伴う海外での調査が実施不可能となった。しかし2020年度は、あらかじめ用意していたプランB(「研究実績の概要」を参照のこと)を実施することで、渡航ができなくても研究を進めることができた。 プランBでは、既存のデータと先行研究に記載されている旱魃時の生残率の値を利用して個体群推移行列を作成し、希釈の効果を検証することとしていた。こうした非常時のバックアッププランを用いることで、2020年度も研究を進めることができたため、おおむね順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、生残率が測定間隔に依存して薄められてしまうリスクを既存のデータを用いてシミュレートすることに成功した。しかし、本研究課題では、実際のデータを用いて見かけの動態と真の動態を比較することが目的であった。残りの研究期間では、この目的の遂行を目指す。 2021年度以降は、2020年度の現地調査で決定した標本集団の生存確認を行う予定としていた。しかし、実際には2020年度にはマレーシアへ渡航し、現地にて調査を行うことがコロナウイルス感染拡大のためできなかった。そこで、2021年度は2020年度に予定していた調査を、後ろ倒して行う。つまり、マレーシア国ヌグリスンビラン州パソ保護林とマレーシア国サラワク州ランビル国立公園で現地調査を行う。現地調査では、大規模調査区内の調査対象個体を選び出す作業を行う。コロナウイルス感染拡大のため難しい場合は、どちらか1か所で行う。 2022年度に、2021年度にこうして抜き取った個体の生残を再確認することで、1年間の死亡率を決定する。こうすることで、1年を単位とした個体群動態モデルを構築する。そして、1年単位の個体群動態モデルと、5年間の平均値を用いた個体群動態モデルを比較することで、5年間の平均化による希釈の効果を定量する。 この実施案を行える可能性が2021年度に残っているため、研究計画作成時に掲げた当初の目標は変更しない。当初の目標とは、目標1(複数年以上の測定間隔により生残率や繁殖率の希釈の効果がどの程度大きいのか、そして、この効果によりもたらされる見かけの動態と真の動態の差を定量的に評価する)と、目標2 (実現可能であり、かつ、個体群動態が歪められない森林観測方法を提案する )の成果を科学のリーディングジャーナル(IF値5.0以上)に公表する、である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では2020年度、マレーシア国ヌグリスンビラン州パソ保護林とマレーシア国サラワク州ランビル国立公園で現地調査を行う予定であった。それが、コロナウイルス感染拡大の影響で実施できなくなった。海外渡航費、および関連費用が使用できなかったために、差額が生じた。 コロナ感染拡大が沈静化し、渡航を伴う現地調査が遂行できる可能性が2021年度にはある。そこで、2021年度での渡航を伴う現地調査時に、滞在(調査)期間の延長や内容の充実を目的とした使用に差額を充てることにする。
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