研究課題/領域番号 |
20K06833
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
柿嶋 聡 独立行政法人国立科学博物館, 分子生物多様性研究資料センター, 特定非常勤研究員 (30648580)
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研究分担者 |
西田 佐知子 名古屋大学, 博物館, 准教授 (10311490)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一斉開花 / 生物間相互作用 / 生物時計 / 繁殖干渉 / 生活史 / 繁殖様式 / 適応進化 / 周期植物 |
研究実績の概要 |
一斉開花とは、何年かに1度、通常の年よりも、はるかに多くの花を個体間で同調して咲かせる現象である。一斉開花する植物の中には、タケのように、集団内のほとんどの個体が1年を越える一定の周期で一斉開花・結実し、枯死する生活史をもつ植物(周期植物)がある。周期植物の多くは、数十年というきわめて長い周期を持つため、その進化要因や進化過程はほとんど未解明である。そこで、沖縄島で6年周期で一斉開花・結実し枯れるキツネノマゴ科のコダチスズムシソウに注目した。コダチスズムシソウは八重山諸島や台湾の集団では一斉開花しないことから、周期的一斉開花は沖縄島で進化したことが推定されている。本研究では、生物間相互作用に注目し、生活史の異なる地域集団間で比較することで、6年周期一斉開花の進化要因を解明することを目的とする。一般的に一斉開花や一斉結実の進化要因として有力な、捕食者飽和説、受粉効率説に加え、新たに本研究で提唱する繁殖干渉仮説について検証を進めている。 2021年度は、沖縄島でのコダチスズムシソウの6年に1度の一斉開花の年にあたり、袋掛け・人工受粉実験を行い、オキナワスズムシソウとの繁殖干渉仮説を検証した。台湾に渡航することができなかったため、沖縄島と八重山諸島のみで調査を行い、捕食者飽和説、受粉効率説の検証に必要な果実食害率、送粉者の訪花頻度、結実率などを調べた。また、生活史の異なるコダチスズムシソウとオキナワスズムシソウの生理生態的な特性を調べ、温度順化能に種間で違いがあることを見出し、論文を公表した。また、生物間相互作用が植物の生活史の進化に与える影響について調べるため、他の植物と昆虫の相互作用に関する研究についても行い、論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる渡航制限のため、台湾における野外調査ができず、遅れている。台湾の共同研究者に依頼して、一部のデータについては取得している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスによる渡航制限が緩和されれば、台湾での調査を再開する。渡航制限が続く場合は、現地の共同研究者らに野外調査を依頼することで、研究を遂行する予定である。沖縄島、八重山諸島でのデータ取得も継続して行い、得られたデータを比較することで、論文をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、台湾での野外調査を行えなかったため、繰越額が発生した。2022年度は台湾の渡航制限が緩和されれば、繰越金を有効に活用して、野外調査を行う計画である。
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