研究課題
一斉開花とは、何年かに1度、通常の年よりも、はるかに多くの花を個体間で同調して咲かせる現象である。一斉開花する植物の中には、タケのように、集団内のほとんどの個体が2年を越える一定の周期で一斉開花・結実し、枯死する生活史をもつ植物(周期植物)がある。周期植物の多くは、数十年というきわめて長い周期を持つため、その進化要因や進化過程はほとんど未解明である。そこで、沖縄島で6年周期で一斉開花・結実し枯れるキツネノマゴ科のコダチスズムシソウに注目した。コダチスズムシソウは八重山諸島や台湾の集団では一斉開花しないことから、周期的一斉開花は沖縄島で進化したことが推定されている。本研究では、生物間相互作用に注目し、6年周期一斉開花の進化要因を解明することを目的とした。これまで一斉開花や一斉結実現象の進化要因として有力であると考えられてきた捕食者飽和仮説、受粉効率仮説に加え、新たに本研究で提唱した繁殖干渉仮説について検証を進めた。繁殖干渉仮説とは、コダチスズムシソウが周期的に一斉開花する沖縄島のみで毎年開花するオキナワスズムシソウと同所的に生育することから、一斉に開花することで種間の繁殖干渉の影響を緩和しているという仮説である。野外集団において人工授粉実験を行い検証したところ、相互に弱い繁殖干渉の存在が確認された。また、コダチスズムシソウは自動自家受粉により結実が可能であるものの、送粉者の存在により結実率の上昇が見られた。一斉開花の際には送粉者の訪花頻度が上昇することから、一斉開花により受粉効率が向上していることが示唆された。これらの成果から、生物間相互作用が6年周期一斉開花の進化へ与える影響が明らかとなってきた。
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https://www.showa-u.ac.jp/research/finb/