研究課題/領域番号 |
20K06843
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
齋藤 誠二 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (70452795)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 足部形状変形 / 足部の痛み / 靴設計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,運動中の足部がどのように変形するのかを明らかにし,靴の形やその変形具合との不適合で生じる圧迫による痛みを抑制できる最適な靴の形状を提案することである.当該年度は,前年度に完了した約300人の女性を対象とした歩行模擬動作中の足部形状の計測と足部における痛みの発生の程度とその部位の調査の結果を分析して学会において発表した. 足部の変形については,成人女性252名のデータから,内踏まず長,外踏まず長,足幅,中足幅は,踵挙上により短縮方向の変化量が大きくなることを示した.また,背骨高さ,アーチ高率,外反母趾角,内反小趾角においては踵挙上により拡大方向の変化量が大きくなることを示した.さらに,足幅の短縮は背骨高さが高い人ほど増加,アーチ高率は,内反小趾角が小さい人,またはアーチ高率が低い人ほど拡大,外反母趾角は,外反母趾角が大きい人ほど縮小方向の変化量が大きくなる傾向を示した. 足部における痛みの発生の程度とその部位の調査では,成人女性250名のデータから,痛みの発生頻度とその程度は,拇趾部,小趾部,踵部が他部位に比べて高いことが示された.さらに,足部変形と痛みの関連を検討したところ,立脚後期において,拇趾部に痛みがある者は外ふまず長および第一趾長の縮小方向の変化が小さいことが示された.また,甲部の痛みがある者は外反母趾角の縮小方向の変化が小さいことが示された.さらに,内果部と外果部の痛みがある者は背骨高さの拡大方向の変化が小さいことが示された. これらの結果は,歩行中に足部はその部位および足部形状特性によって特有の変形を起こしていること,そして,その変形により痛みが発生していることを示唆している.この結果は,静止立位時の足部形状をもとにした既存の靴づくりの問題点を指摘するものであり,今後の靴設計において重要な知見となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間を1年間延長したことで,約300人のデータ分析を終えて重要な知見を得ることができた.しかし,最終年度に予定していた靴への実装と評価については完了していない.研究期間を1年間延長することになったため,2024年度にこれらの研究を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究のゴールは「足部疾患患者の足部の痛みを抑制するための最適な靴形状を確定する」ことである.そのため,これまで得られた知見を研究協力関係にある靴メーカーと共有して,プロトタイプを作成して,痛みの発生や圧迫力等を検討することで,最適な靴形状を提案する予定である.また,靴づくりのもとになり欠かすことができない木型(ラスト)設計における提案も予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の予定していた最終評価実験が完了していないため.
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