研究課題/領域番号 |
20K06851
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
竹内 勇一 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (40508884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 左右性 / 学習 / 脳の機能分化 / 捕食行動 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
右利き・左利きは多くの動物で認められ、精巧で力強い運動に必要でありながら、その神経機構や進化の理解は驚くほど進んでおらず、長い間謎とされていた。アフリカ・タンガニイカ湖の鱗食性シクリッドPerissodus microlepis(鱗食魚)は、ヒトの利き手に相当する明確な左右性を示す。本研究では、鱗食魚の右利き・左利きをモデルとして、左右性獲得の生得的要因と経験的要因を明らかにし、左右性のメカニズムの理解を目指す。 「鱗食性シクリッドにおける捕食行動の左右性の獲得様式」について大きな進展があった。左右性獲得の臨界期の有無とその特性を解明するため、鱗食経験のない生後4ヶ月の「幼魚」、8ヶ月の「若魚」、生後12ヶ月の「成魚」を作成し、捕食行動実験を数日おきに5回繰り返し行った。幼魚は実験1回目から口部形態に対応する方向から襲う好みを示し、その好みは実験を経るごとに強くなり、結果的に実験5回目では8割の個体で有意な偏りを示した。若魚でも襲撃方向は徐々に変化したが、有意な偏りを獲得した個体は半数で、成魚では1個体もいなかった。また、幼魚と若魚では経験に応じて捕食成功率が上昇するのに対し、成魚では変化せず、幼魚や若魚よりも有意に低かった。したがって、学習による左右性の獲得能力には敏感期(臨界期)があり、少なくとも生後12ヶ月には完全になくなると考えられる。 以上は、第68回日本生態学会岡山大会(2021年3月17-21日)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習実験は非常に時間がかかるが、現在まで予定どおり行うことができており、論文を執筆している段階に入っている。また、捕食時に重要と予想される後脳マウスナー細胞の形態的左右差について、3次元的解析を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)捕食行動に関与する脳領域の活動の左右差を組織学的解析から明らかにする。(2)片眼視野を一時的に欠損させた鱗食魚を用いて、襲撃方向の偏りの経時変化を調べ、左右性の可塑性を明らかにする。(3)すでに行ったRNA-Seqの解析を進め、利きと対応した発現量の左右差を示す遺伝子群を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響から、共同研究をあまり遂行することができず、関係する実験用消耗品と出張費が浮く形となった。次年度はなるべく計画通り進めたい。
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