研究実績の概要 |
本研究は、脳梗塞において、オリゴデンドロサイトとその前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell, OPC)が、どのように神経系、グリア系、血管系を含めた周囲の細胞と相互作用し、病態に関与しているのかを明らかにし、脳梗塞に対する治療応用へと展開する研究基盤を確立することが目的である。 OPCには多様性があり、“perivascular OPC”が血管周囲に存在し血管機能を直接調節することや、血液脳関門の重要な構成因子であり血管周囲に存在するペリサイトや血管内皮細胞との相互連携により脳恒常性維持や脳血管疾患の病態に関与することを示してきた。また、“circulating pre-OPC”が末梢循環と脳をつなぐ役割を果たす可能性を見出してきた。さらに、“parenchymal OPC”が神経系と直接シナプスを形成し両者の間に双方向性の作用が存在することも確認している。その他、OPCが分化段階、脳領域、性別、各病的環境、齢などによって、その機能・形質を大きく変化させることも見出してきている。 脳梗塞病態と関連して、異なるレベルの低酸素環境によってもOPCの形質・機能が下記のように変化することを確認している。1)脳梗塞マウスモデルにおいて、大脳皮質領域で“perivascular OPC”が増加し、脳梗塞後の血管新生と連動する。2)高度の低酸素負荷をかけた初代培養系OPCは、血管新生促進因子を多く発現、分泌する一方で、OPC分化因子は低下する。3)高度の低酸素負荷をかけた初代培養系OPCは、in vitro、in vivoのどちらの系においても、血管新生を促進する作用をもつ。4)中等度~軽度の低酸素負荷をかけた初代培養系OPCでは、血管新生促進因子が低下する一方で、OPC分化因子は亢進する。
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