研究課題/領域番号 |
20K06854
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅生 紀之 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (20372625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子・細胞・神経生物学 |
研究実績の概要 |
正常なヒト脳の発生発達過程では、免疫系に次いで多くの体細胞突然変異が神経細胞に生じることが明らかとなってきた。それは多様化のメカニズムと考えられている一方で、過剰になると脳発達障害や精神神経疾患に繋がることが示唆されている。しかし、いつ・どこで・どのように変異が蓄積するのかに関しては不明な点が多い。本研究は、申請者らが明らかにしてきた神経細胞の発生・分化プログラムに組込まれたDNA修復酵素DNAポリメラーゼβ依存的なエピジェネティクス制御のDNA脱メチル化に際してのゲノム不安定性に焦点をあて、この高頻度体細胞突然変異の分子メカニズムを調べることを目的とする。本年度は、(1)クローンマウス作製技術を用いて、野生型およびDNAポリメラーゼβ欠損大脳皮質神経細胞由来の細胞核を持つ複数のES細胞株を樹立した。それら細胞から抽出されたゲノムDNAを用いて、次世代シーケンサーにより全塩基配列の決定を行なった。その配列情報を用いて、個々の神経細胞に特有の体細胞突然変異を同定した。2)DNAポリメラーゼβ欠損ヒトiPS細胞由来大脳オルガノイドを用いて、疾患に繋がる突然変異形成の分子メカニズムとして神経細胞分化過程におけるゲノム不安定性を調べた。3)環境要因としてDNA脱メチル化に関わる因子であるビタミンCに着目して、神経細胞においてビタミンCトランスポーターを遺伝子操作することでゲノム安定性に与える影響を調べた。また、ビタミンCトランスポーター欠損マウスの作製に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、実験はおおむね順調に進んでいる。しかし、精神神経疾患関連遺伝子におけるゲノム不安定性の解析は十分とは言えず継続する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、継続してDNAポリメラーゼβを欠損したマウスおよびヒト大脳オルガノイドを用いて体細胞突然変異の詳細な解析を進める。さらに、明らかになったビタミンCの過剰な細胞内取込みがもたらすゲノム不安定性の神経細胞分化への影響を調べる。また、ビタミンCトランスポーター欠損マウスの作製を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスでの全ゲノム塩基配列解析の結果を事前に得ることができたため、その費用を次年度以降のヒト脳オルガノイドでの解析で使用する予定である。また、新型コロナ感染拡大の影響により学会参加等に予定していた費用を次年度で使用することになった。実験を継続して行い、その物品費と研究発表の旅費、論文投稿に関わる費用に充てる予定である。
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