研究課題/領域番号 |
20K06855
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 武 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (60402567)
|
研究分担者 |
臼井 紀好 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00784076)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 神経細胞 / 軸索起始部 / 細胞骨格 / Ankyrin-G / リン酸化 |
研究実績の概要 |
脳は経験や加齢、病気などにより絶えず構造や機能が変化する。この性質は可塑性と呼ばれ、シナプス可塑性は長らく脚光を浴びてきた。神経軸索の根元は軸索起始部と呼ばれ、軸索と細胞体/樹状突起の架け橋である高度に特殊化された区画である。軸索起始部は活動電位発生と神経極性維持という主に2つの機能を担う。最近、新規の神経可塑性として軸索起始部の構造が可塑的であると報告された。この発表以降、軸索起始部は神経活動や病気などに応答して長さが変化することが明らかになりつつある。しかし、どのような分子機構で軸索起始部の長さが変化するのかは理解されていない。申請者は、軸索起始部の細胞骨格分子Ankyrin-Gがリン酸化制御されていることを見出した。本研究の目的は、Ankyrin-Gのリン酸化を足がかりにして軸索起始部に特有な細胞骨格を制御する分子機構を解き明かすことで神経可塑性の新規分子機構を明らかにすることである。 2020年度は、Cdk5によるAnkyrin-Gのリン酸化部位を同定するために、リン酸化予想部位をアラニンに置換したAnkyrin-G変異体を作製し、この変異体とRIラベルされたATPおよび精製されたCdk5を用いてin vitroキナーゼアッセイを行った。サンプルをSDS-PAGEで分離した後に銀染色を行い、オートラジオグラフィーを用いてリン酸化されたサンプルを検出した。この変異体ではCdk5によるリン酸化が殆ど検出されなかった。故に、主なリン酸化部位が1カ所同定された。このリン酸化部位を特異的に認識する抗体を作製中であり、今後この抗体を用いてAnkyrin-Gのリン酸化がいつ、どこで、どの程度起こるのか調べる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度中にCdk5によるAnkyrin-Gのリン酸化部位を同定することができた。さらに、このリン酸化部位を特異的に認識する抗体を作製中である。故に、本研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
Ankyrin-Gのリン酸化部位特異的抗体を作製する。作製の際には数多くの抗体候補から良い抗体を選別する。この抗体と培養神経細胞を用いて、Ankyrin-Gのリン酸化がいつ、どこで、どの程度起こるのか調べる。Ankyrin-Gのリン酸化模倣変異体または非リン酸化型変異体を用いて既知の結合分子とのin vitro結合実験を行い、リン酸化がAnkyrin-Gと相互作用分子の結合に与える影響を測定する。非リン酸化型Ankyrin-G変異体を発現する遺伝子改変マウスを作製し、Ankyrin-Gのリン酸化が軸索起始部構造の形成に必須であることを証明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、実験が制限された期間があったり学会がWeb開催になったため、全体として計画にずれが生じた。次にAnkyrin-Gのリン酸化の生理的意義の解析を行う予定である。
|