研究課題/領域番号 |
20K06856
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミクログリア / 睡眠 / シナプス / 学習 / 記憶 / 社会行動 / サーカディアンリズム |
研究実績の概要 |
ラットを用いてミクログリアの活性の日内変動を研究することで、ミクログリアは就寝時前後に活性化し、シナプスを貪食し、シナプス総量を減少させていることを示した(Choudhury et al. Glia 2020)。ミクログリアの活性変動は、自分自身の時計遺伝子のサーカディアンリズムではなく、青斑核のノルアドレナリンや副腎皮質のグルココルチコイド分泌と関連しているものと考えられた。また、ミクログリアの貪食能はグルタミン酸によって活性化するが、ノルアドレナリンでその活性化が抑制されることなど、ミクログリアのシナプス貪食は神経細胞活動と密接に関連していることを示した。補体やMFG-E8など細胞表面にフォスファチジルセリンPSを表出するシナプスがミクログリア細胞内に取り込まれており、ミクログリアに貪食除去されるシナプスは活動性の低いシナプスと考えられた。このような観察から、ミクログリアの睡眠中のシナプス貪食は、新たな記憶や学習のために新たなシナプス形成を行う上で、非常に重要であると考えられた。これらの結果は、睡眠研究において非常に重要な新たな視点をもたらしたものとして、世界的に強い関心を持たれている。上記論文は、まだ発表後間もないが、すでに20回引用されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクログリアが毎晩就寝時刻前後に活性化して、シナプスを積極的に貪食し、その結果夜間就寝時間中にシナプスの総量が減少することを明らかにしてきた。ミクログリアに貪食除去されるシナプスは活動性の低いシナプスと考えられた、なぜなら、補体やMFG-E8など細胞表面にフォスファチジルセリンPSを表出するシナプスがミクログリア細胞内に取り込まれていたからである。ミクログリアによる就寝時のシナプス貪食の役割を解明するために、主にMyD88ノックアウトマウスを用いた研究を進めた。MyD88-KOマウスから分離したミクログリアはフローサイトメトリーでFS, SS共に小さく、CD11bの発現が弱く、また一次培養ミクログリアの貪食能は低下していた。脳波による解析ではKOマウスは特に明期の睡眠時間(NREM睡眠)が減少していた。水迷路試験での空間認知記憶能力が野生型に比べ成績が悪く、ミクログリアの入眠時のシナプス貪食は記憶や学習に必須のものと解釈された。
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今後の研究の推進方策 |
今後当面の間、上記KOマウスの行動解析、免疫組織化学的検討を行う。行動解析では、ミクログリアのシナプス貪食の不良が及ぼす学習認知能力、記憶能力以外に、感情や社会性に関する解析も行うこととしている。
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