研究課題
ミクログリアと睡眠の関係について引き続き検討を進めた。MyD88-KOマウスのミクログリアの活性が低いことから、このマウスを用いることで、ミクログリアの睡眠における役割を明らかにできると考え、種々の検討を行った。MyD88-KOマウスと野生型マウスの脳波記録と筋電図記録を行い、睡眠・覚醒周期を調べたところ、昼間はMyD88-KOマウスは覚醒時間が長く、NREM時間が短いことが明らかになった。また、尾部懸垂試験とショ糖選択試験により、MyD88-KOマウスは抑うつ様表現型を示した。高速液体クロマトグラフィーを用いて前頭前野のモノアミンを測定したところ、MyD88-KOマウスの前頭前野ではセロトニン含量が減少していることが確認された。さらに、MFG-E8とC1qBが結合したシナプスが、野生型マウスのPFCでは明期の開始時刻ZT1において増加していたが、MyD88-KOマウスでは増加していなかった。MyD88-KOマウスの初代培養ミクログリアは、FACSを用いた研究手法を駆使することで貪食能が低下していることを明らかにした。これらの結果から、MyD88の遺伝子欠損は、ミクログリアのホメオスタシス機能、特にシナプス貪食除去機能に影響を与えるものと考えられ、行動実験により示唆されたMyD88-KOマウスのうつ傾向は、情動に対する睡眠の働きとミクログリアの関与についての関連性を示唆するものであり、今後検討を進めたい。特に、セロトニン作動性ニューロンの出力低下との関連を明確にしたい。
2: おおむね順調に進展している
MyD88ノックアウトマウスを用いた研究は、筆頭論文として取りまとめすでにJ, Neuroimmunology誌に掲載された。また、睡眠とミクログリア、ミクログリアのシナプス貪食機能と高次機能との関連について、筆頭著者として2報の総説にまとめ発表するなど、順調に研究業績を伸ばしているため。
ミクログリアの活性を低下させる薬理学的介入、例えばアドレナリンβブロッカーであるプロプラノロールやグルココルチコイドのデキサメサゾン投与により、ミクログリアのシナプスの貪食除去機能を低下させた場合に、前頭葉セロトニン含量が変化するかどうか、また、尾懸垂試験のようなうつ傾向を判定する行動実験によりうつ傾向を示すようになるのかどうか、解析を進めていく。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件)
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