研究課題
令和4年度は、睡眠覚醒リズムに大きな障害を与えるせん妄についてミクログリアと関連づけて研究を進めた。せん妄は、種々の脳疾患、高齢者、外科手術ストレス、感染症、外傷などを背景に発症する病態であり、サーカディアンリズム(睡眠覚醒リズム)の異常を伴い医療・看護を困難にし、患者本人にも多大な苦痛を与える。せん妄では、ミクログリアの活性化に伴って、種々の起炎症性サイトカインの脳内での産生増加が起こり神経炎症を生じることが主要な病態生理であると考えられている。今回の研究では、睡眠覚醒リズムの異常を生じるせん妄モデルを、大腸菌由来リポポリサッカライドLPSの腹腔内投与により作成した。LPS投与後、脳波のサーカディアンリズムが不明瞭となり、脳内ではTNFαとIL-1βの発現増加が見られた。しかし、投与後約20時間で脳波のサーカディアンリズムは概ね正常化し、IL-1βは高発現が持続したものの、TNFαの発現は低下した。この時、脳内ではドーパミン濃度が上昇していた。前頭葉および培養ミクログリアはドーパミンD1受容体を発現していたが、D1アゴニストを投与すると、TNFαとIL-1βの発現は減少した。ほぼ同様の効果が、LPS投与ラットへのL-DOPA投与でも得られた。我々は既に、ノルアドレナリンによるミクログリア機能制御がサーカディアンリズム形成に重要であることを示しているが、今回の結果はドーパミンも関与していることを新たに示したことになる。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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