研究実績の概要 |
本研究では、ライソゾーム病でみられる中枢神経系の障害モデルにおいて、ニューロン単独培養における解析に加え、脳内に豊富に存在するミクログリアの影響の解析を目的としている。昨年度、ヒトiPS細胞より神経幹細胞を経て、それぞれ、ニューロンやミクログリアを作出し、その共培養系におけるニューロンのシナプス機能を測定した。そして、健常ニューロンに疾患ミクログリアを共存させた場合、ニューロンの神経伝達物質放出の制御機能低下などがリアルタイムイメージング解析などで明らかとなった。本年度では、健常ニューロン(N2-1)に、別の健常(N3-2)または疾患(GM1-A360; GM1-ガングリオシドーシス)ミクログリアをそれぞれ添加し共存培養を実施後、シナプス関連分子の遺伝子発現変化を解析した。 最初に、分化ステージを確認するため、神経幹細胞(NESTIN)およびニューロン(MAP2およびTUJ1)マーカーの発現を解析した。ミクログリアが健常(N3-2)または疾患(GM1-A360)であっても、健常ニューロン(N2-1)におけるこれらのマーカー発現には差が見いだせなかった。次に、プレシナプスにおける神経伝達物の放出や、興奮性伝達物質グルタミン酸の受容体、およびカルシウムチャネル等の発現解析を行った。その結果、健常ニューロン(N2-1)におけるプレシナプス(SNAP25,STX1a,SYNAPSIN1),カルシウムチャネル(Cav1.2, Cav2.1)の発現に、共存ミクログリアが健常または疾患であることでの変化は観察されなかった。一方、グルタミン酸受容体において、AMPA型(GluR1、GluR2, GluR3, GluR4)およびNMDA型(NR1, NR2A)の発現解析を実施し、疾患ミクログリアの共存により、NR2A発現が特異的に低下していることを見出した。
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