研究課題/領域番号 |
20K06866
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
谷本 昌志 基礎生物学研究所, 神経行動学研究部門, 助教 (30608716)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前庭 / 内耳 / 耳石器官 / 空間識 / 前庭神経核 / 内側縦束核 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
前年度までの研究により、受精後5日のゼブラフィッシュにおいて、ロール方向の静的傾斜時には、主に傾斜時下側の内耳耳石器官から脳へ前庭入力が伝達されることが明らかになったため、その前庭情報がどのような神経回路によって情報処理されるのかを調べた。前庭神経核の亜核であるTangentail nucleus(TAN)の一部のニューロンが転写因子evx2陽性であることを発見し、それを基に形態学的・機能的解析を行った。evx2陽性TANニューロンはグルタミン酸作動性の交連性ニューロンであった。上行・下行性の軸索分枝をもつニューロンと、上行性の軸索をもつニューロンが観察され、上行枝は動眼・滑車神経核および内側縦束核へ投射した。ロール方向の静的傾斜時の活動をCa2+イメージングで調べると、期待された通り傾斜時下側のTANニューロンで大きな活動が観察された。 ロール方向の静的傾斜時に、仔魚は傾斜時上側へ持続的に胴体を屈曲させることをも発見し、この運動へのTANニューロンの寄与を調べた。TANニューロンを光遺伝学的に活性化させると反対側への胴体屈曲が観察され、TANニューロンをレーザー破壊すると破壊側が傾斜時下側になる静的ロール傾斜時に胴体の屈曲角度が著しく減少した。同様にCa2+イメージングおよび細胞破壊実験を行うことにより、(傾斜時下側の)TANから(傾斜時上側の)内側縦束核、そしてposterior hypaxial muscleという胴体の筋肉へ至る神経回路と筋によってロール傾斜から直立姿勢を回復する行動が行われていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前庭神経核の一部のニューロンの解析は進んだものの、特定の種類のニューロン選択的に発現するような遺伝子マーカーに関する情報が不足しており、他の種類のニューロンの解析が進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現の組み合わせに注目して特定の種類のニューロンを選択的に標識し、形態および機能解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
姿勢制御の神経回路の解析が進み、その成果発表を優先させて実験消耗品や人件費が予定より少なくなったため次年度使用額が生じた。当初の計画に基づいて円滑に使用する。
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