前庭神経核に含まれるニューロンのサブタイプの性質を調べるために、遺伝子組換えゼブラフィッシュ仔魚を活用して可視化することを試みた。前庭神経核の一部のニューロンが発生すると予想される後脳の一部の分節に発現するHox遺伝子のひとつに注目し、hoxb3a陽性かつグルタミン酸作動性(vglut2a陽性)のニューロンが蛍光タンパク質Kaedeを発現する遺伝子組換えゼブラフィッシュ仔魚を作成した。共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて形態観察を行ったところ、後脳第5分節の外側端に20個程度の細胞体がクラスターとして存在し、また同分節の背側端に広範に密に細胞体が存在し、そこから背腹軸方向の中心部分にかけてモザイク状に細胞体が分布し、腹側端近くにまばらに少数の細胞体が観察された。これらの多数の細胞の樹状突起と軸索が入り組んで存在するため、個々の細胞の詳細な形態は未確認である。しかし、前庭神経軸索終末が投射する後脳外側部へ神経突起を投射するものが複数観察され、一次前庭ニューロンから直接シナプス入力を受けているニューロンが存在する可能性が示唆された。また、背側に存在するニューロンの細胞体から腹側へ投射する神経突起も複数観察されたほか、交連性軸索が正中線を越えた後に内側縦束を動眼神経核・内側縦束核付近へ上行するもの、後脳尾側部へ下行するものも観察された。交連性軸索の形態学的特徴は前庭神経核のひとつであるTangential nucleusに含まれるニューロンの特徴と一致していた。
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