研究課題/領域番号 |
20K06871
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小野 健治 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (80329698)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / グリア前駆細胞 / オリゴデンドロサイト / ミクログリア / オプトジェネティクス |
研究実績の概要 |
光感受性陽イオンチャネルchannelrhodopsin-2(ChR2)を発現させたグリア前駆細胞を光刺激することで、脱髄部位においてオリゴデンドロサイトへの分化と再ミエリン化が生じるが、光刺激したグリア前駆細胞がその周囲の細胞とどのように相互作用するのかはよくわかっていない。本研究課題は、光刺激により分化誘導されたグリア前駆細胞が放出する細胞外小胞(EV)とミクログリアの相互作用に着目し、EV応答により生じたミクログリアの機能変化が再ミエリン化にどのように関わるのかを明らかにし、将来的な再生医療応用や新規治療薬開発へと展開するための基盤を確立することを目的としている。今年度は、分化誘導によってグリア前駆細胞から放出されるEVの性質がどのように変化するか、またその機序について検討した。ChR2を遺伝子導入したグリア前駆細胞株OS3ChR2細胞に光刺激を行うと、放出されるマイクロベシクル(LEV)やエクソソーム(SEV)の平均粒子径に変化はなかったが、細胞当たりのLEVおよびSEVの放出量が増大した。また、光刺激の有無によって放出されたSEVを同じタンパク量で比較すると、Alixやテトラスパニンの含有量が光刺激群で低下していた。さらに、光刺激の有無によって放出されたEVに含有されるmiRNAについてアレイ分析を行うと、EV中に含有されるmiRNAのうち増減するmiRNAが複数存在していた。SEVの放出にはendosomal sorting complexes required for transport (ESCRT)依存的経路と非依存的経路が存在するので、光刺激による細胞当たりのSEV放出増大がどの経路を介するかを調べたところ、ESCRT依存的/非依存的経路の両方の経路を介していた。また、その際にはERK1/2とAkt両方のシグナル経路の活性化が寄与することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の当初予定は、ChR2発現グリア前駆細胞から放出されるEVの分析としてEV構成物質に関する分析とEV放出に関わる分子機序の分析を行うことであった。これらの項目において予定通り実施し、成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降は、グリア前駆細胞から放出されるEVがミクログリアの機能にどのように変化を及ぼすかについて検討する。また、脱髄モデルマウスにおいてEVに応答したミクログリアが再ミエリン化にどのような影響を及ぼすかについて解析する。
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