本研究課題は、分化誘導されたグリア前駆細胞が放出する細胞外小胞(EV)とミクログリアの相互作用に着目し、EV応答により生じたミクログリアの機能変化が再ミエリン化にどのように関わるのかを明らかにし、将来的な再生医療応用や新規治療薬開発へと展開するための基盤を確立することを目的としている。今年度は、光感受性陽イオンチャネルchannelrhodopsin-2(ChR2)を発現させたグリア前駆細胞が放出するエクソソームに着目し、エクソソームに含有されるmiRNAがミクログリアにどのような影響を及ぼしているかについて検討した。 ChR2を発現したグリア前駆細胞株OS3ChR2を光刺激により分化誘導させた際と、無刺激時のエクソソームを回収し、炎症に関わるmiRNAに関してPCR arrayで分析した。炎症やM1極性転換に関わるmiR-155などのmiRNA含量が無刺激時に比べて分化誘導時に減少することがわかった。エクソソーム中に見られるmiRNA含有量の変化が、ミクログリアの性質に変化を及ぼしている可能性が考えられたので、miR-155に対する阻害剤を脱髄モデルマウスに投与した。脱髄モデルマウスの脱髄部位におけるミクログリアは、M1マーカーの一つiNOSを発現しM2マーカーであるCD206の発現がほとんど見られない。それに対しmiR-155に対する阻害剤を投与したマウスの脱髄部位では、iNOSを発現したミクログリアが減少し、CD206を発現したミクログリアが増加した。グリア前駆細胞にChR2を発現させたトランスジェニックマウスNG2-ChR2マウスを用いた脱髄モデルにおいても光刺激によってiNOS陰性CD206陽性ミクログリアの集積が見られるので、miR-155のようなエクソソーム中のmiRNAを介してグリア前駆細胞はミクログリアと細胞間情報伝達を行っている可能性が考えられた。
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