研究課題/領域番号 |
20K06877
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐々木 幸生 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (10295511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経生物学 / 脆弱X症候群 / 相分離 / 横浜市 |
研究実績の概要 |
脆弱X症候群の原因遺伝子産物Fragile X mental retardation protein (FMRP) がプレシナプス形成時に顆粒を形成するか否かを検討するために、プレシナプス形成オーガナイザータンパク質をコートしたビーズを用い、FMRPのプレシナプスへの集積を解析した。その結果、プレシナプス形成1時間後からFMRPは顆粒状に集積を開始し、2時間後には集積の程度が最大に達し、その状態が18時間以上継続した。FMRPと複合体を形成するG3BP2も同じ時間経過でプレシナプス内に顆粒状に集積し、FMRPとG3BP2は顆粒内で共局在していた。G3BPファミリーは相分離で顆粒形成することが報告されていることから、FMRPもプレシナプス形成時に相分離により顆粒形成する可能性が示唆された。また、5.8S rRNAを認識するY10B抗体でも顆粒を認識したので、RNA結合タンパク質であるFMRP、G3BP2と共にリボソームが集積していることが示された。これらのことから、プレシナプスで翻訳調節が起こっていることが示唆される。 G3BPファミリーはC末端の天然変性領域が相分離による顆粒形成に関与することが報告されている。我々は天然変性領域を欠くG3BP2がdominant-negative (DN) 体として働き、ストレス顆粒形成を抑制することを見いだした。このDN体はFMRPの顆粒への集積も抑制したことから、神経細胞内のFMRPを含む顆粒形成の抑制に使用できると考えられる。また、FMRPの天然変性領域を欠く変異体もDN体として顆粒形成を抑制できることが明らかとなった。これらの変異体を用いて、神経細胞内の顆粒形成を制御することで、相分離により形成されるFMRP含有顆粒の役割を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プレシナプス形成時に顆粒形成が可視化でき、そこにFMRPと相分離により顆粒形成するタンパク質の代表であるG3BP2が共局在することを明らかにしたことから、1年目の計画目標である「プレシナプス形成時に集積する顆粒の局在、構成成分の解析」が達成できた。また、DN体を作成し、顆粒形成を制御できることがわかった。さらに、下記に示すように、光遺伝学を用いた新手法も着手している。これらのことから、順調に推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
相分離による顆粒形成を時間空間的に制御するため、光遺伝学を用い、光照射による顆粒形成を誘導するCoreletシステムを導入した。現在、このシステムでFMRPやG3BP2が光照射により顆粒形成を行うか検討中である。このシステムを用いて、顆粒形成に必要な領域やアミノ酸残基の同定と、顆粒形成の神経細胞における役割を解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定額を使用したが、10円端数が生じた。この10円は次年度の消耗品購入に充てる予定である。
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