研究課題
哺乳類成体の中枢神経軸索は損傷からの再生能力を失っている。私たちは、これまでに、膜輸送の制御を通じて神経突起の伸展を促進するGタンパク質TC10が軸索再生に不可欠であることをノックアウトマウスの解析により示した。本課題研究では、TC10が膜輸送の制御だけでなく、微小管を安定化させて軸索の退縮を防ぐことによって神経突起伸展を促進するという分子機能を持つことを新たに見出した。そのシグナル経路では、細胞膜と小胞の2か所に存在するTC10のうち、小胞上のTC10が微小管の安定化に特異的に働いており、TC10のエフェクターはPAK2キナーゼである。TC10-PAK2はJNKを介して微小管制御因子であるSCG10とMAP1Bのリン酸化を行う。PAK2、 JNKのスキャフォールドであるJIP1、SCG10はTC10陽性小胞に存在することから、このTC10による微小管安定化シグナルは局所的なものである。変性蛋白質の細胞内蓄積に由来する神経変性疾患の初期病変の多くについて、リソソームの形成と細胞内配置の異常が関わると考えられている。Rab7 Gタンパク質はリソソーム分解経路のマスターレギュレーターであることから、本課題では、アルツハイマー病モデルを使って、Rab7活性を可視化するセンサーにより変性疾患とリンクするRab7活性分布の異常を検索する研究を進めた。Neuro2A細胞を使って、優勢劣性型Rab7の発現やRab7不活性化因子の発現といったRab7の持続的な活性低下の誘導により、初期エンドソームでRab5活性上昇が起きることを見出した。また、この時、該当する初期エンドソームでは肥大化が起きている。次の段階として、アミロイド前駆体APPおよびそのswedish変異体を海馬ニューロンに発現させてエンドソームでのRab7活性の低下を比較するための系の立ち上げを行った。
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Cell Reports
巻: - ページ: -
10.1016/j.celrep.2023.112071
細胞
巻: 55 ページ: 67-70
http://kir628906.kir.jp/publications.html