研究実績の概要 |
グルタミン酸輸送体(興奮性アミノ酸輸送体 excitatory amino acid transporter, EAAT)タンパク質は、神経細胞から放出された興奮性伝達物質グルタミン酸(glutamate, Glu)の回収を担い、神経伝達を速やかに終結させるとともに、過剰Gluの興奮毒性から神経細胞を保護する役割を持つ。これまでにラット小脳プルキンエ細胞のEAATは、エタノールによりそのターンオーバー率(Glu輸送行程の回転速度)が亢進し、登上線維伝達物質Gluのシナプス外拡散を抑制することを見出している。
プルキンエ細胞が登上線維Gluを回収する過程を詳しく解析するため、登上線維の電気刺激に伴いプルキンエ細胞において誘発される、シナプス性輸送体電流(synaptic transporter current, STC)を観察した。粘性多糖類 dextran(40 kDa, 5 %)は STCの振幅を可逆的に増大させた。このSTC増大は、登上線維Gluが放出部位から拡散していく過程が dextranによって物理的に阻害されたことにより、シナプス近傍に滞留したGluがより多くのEAAT分子によって回収されている様子を反映していると考えられる。一方、エタノール(50 mM)は STCの振幅を有意に減弱させた(減衰時間には無効)。エタノールは、プルキンエ細胞のGlu取り込み機能を促進することにより、登上線維シナプス近傍のGlu濃度を低下させていることを示唆している。
|