研究課題/領域番号 |
20K06890
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白崎 竜一 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40423149)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経回路形成 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 軸索ガイダンス / 標的認識 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、小脳プルキンエ細胞の軸索が構築する小脳出力回路の形成過程をマウスの個体レベルで詳細に明らかにし、その特異的な軸索投射発達を制御している分子機構を解明することを目指している。本年度は、先行研究で既に確立させていたプルキンエ細胞選択的な遺伝子発現系を、プルキンエ細胞が生まれる時期の小脳に子宮内電気穿孔法により導入することで、プルキンエ細胞の軸索伸長の初期過程とその後に続く標的細胞(小脳核ニューロン)への軸索伸長過程、さらには小脳核ニューロン近傍での軸索挙動をin vivoで詳細に解析した。尚、この一連の解析は、低細胞密度で可視化されたGFP発現プルキンエ細胞をその細胞体から軸索の先端である成長円錐までを連続的に把握することを可能とさせる後脳全標本と3D蛍光イメージング技術を組み合わせて行われた。また、プルキンエ細胞の標的である小脳核ニューロンはその特異的分子マーカーであるLhx2/9の抗体を用いた免疫組織化学染色により可視化させて同定した。その結果、プルキンエ細胞の軸索が小脳核近傍に到達するまでの過程や、その後に小脳核内部へ侵入し小脳核ニューロンを標的細胞として認識している過程での軸索挙動の詳細が明らかとなった。また、これらの結果の妥当性を評価するために、プルキンエ細胞特異的にその分化初期から選択的に発現し、プルキンエ細胞の特異的な分子マーカーとしても知られている転写因子Skor2のエンハンサーをマウスのゲノムから単離することで、新規のプルキンエ細胞選択的な可視化技術(遺伝子発現系)も新たに構築させた。この技術を導入した解析によっても、プルキンエ細胞の軸索伸長過程と標的認識過程における軸索挙動の詳細について、同様の結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度においては、小脳プルキンエ細胞の軸索伸長過程と標的認識過程をマウスの個体レベルで詳細に明らかにすることに成功し、本研究の目的達成のために必須となる重要な基礎データが得られた。さらに今後の研究展開を見据えて、プルキンエ細胞の軸索挙動の表現型の妥当性を評価するための新規のプルキンエ細胞選択的な遺伝子発現系も構築させた。したがって、概ね当初からの計画通りに研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度においては、小脳プルキン細胞の軸索伸長過程と標的認識過程をマウスの個体レベルで明らかにし、その回路形成機構を解明するための重要な基礎データを得た。そこで次に、その分子機構の一端に迫るために、プルキンエ細胞選択的に分化初期から発現している核内受容体RORaに焦点をあて、RORaがプルキンエ細胞の軸索投射発達のどのような局面を制御しているのかを明らかにする。そのために、プルキンエ細胞の軸索伸長期において、RORaの機能阻害実験を個体レベルで行い、回路形成異常の表現型を解析する。ここでは、RORaの優性型機能阻害変異体をプルキンエ細胞に導入する実験とCRISPR/Cas9技術の活用による機能阻害実験を行う。また、その解析は既に確立させているプルキンエ細胞選択的な可視化技術によって進める。
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