研究課題
自閉症発症には性差が存在すると言われており一般的に女児よりも男児の方が約4倍あるいはそれ以上自閉症児の人数が多いと考えられている。これまでに自閉症発症に性差がある原因について、様々な説が出されている。しかし自閉症発症に何故性差があるのか、そのメカニズムについては未だ解明されていない。そこで本課題では、自閉症性差形成メカニズムのうち「性ステロイド仮説」について、雌雄差のある自閉症モデルマウスを用いて検証することを目的とした。 この説は、雄(男児)の精巣から出生前後に分泌される男性ホルモンが、発達中の脳に直接作用もしくは女性ホルモンに変換されて作用し、脳の性差形成に影響するという説である。この説を検証するため、CRMP4欠損マウスを用い(自閉症発症 雄>雌)、出生前に男性ホルモンを妊娠母体に注射により、もしくは餌に添加して投与する実験を行った。自閉症発症確認を短期間で行えるよう、仔マウスの超音波発声を自閉症発症の指標とする実験を実施し、生後1週齢で野生型と自閉症様マウスの区別や雌雄差の検出を可能にした。次に2つの方法(注射とクッキーに添加)で母マウスにホルモンを投与する実験を行った。しかし雌個体の産出が止まったり、マウスの超音波発声に激しいばらつきが生じたため、ホルモン投与の効果について一定した結果が得られなかった。野生型とCRMP4欠損マウスとの間で、匂い識別能の違い、匂い刺激での興奮部位の違い、樹状突起の伸長の違いなど、これまでに嗅球に関する知見を多数得ていたため、CRMP4欠損マウス雌雄の嗅球での遺伝子発現の違いをトランスクリプトーム解析により調べた。その結果、リーリンなど発現量が雌雄で異なる遺伝子が複数見つかった。これらからCRMP4欠損が、これらの遺伝子発現の雌雄間での違いを生み、それがニューロンの成長・移動の差、自閉症発症の雌雄差を生じた可能性が提起された。
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http://www2.toyo.ac.jp/~r-kaneko/publications.html