研究課題/領域番号 |
20K06908
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高坂 洋史 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (20431900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動制御 / 神経回路 / コネクトミクス / ショウジョウバエ / 遺伝学 / 体節間制御 |
研究実績の概要 |
多くの動物は、体軸方向に体節構造をもつ。動物がスムーズな運動を実現するためには、隣接した体節の間で、筋収縮のタイミングや強度が適切に調節されることが必要である。本研究課題では、ショウジョウバエ幼虫をモデル動物として用いて、スムーズな運動を生み出すための神経回路機構について研究を進めた。カルシウムイメージング法によって、前進運動や後進運動において活動する介在神経細胞を探索したところ、前進運動で強く活動する介在神経細胞YT1を同定した。この細胞は、各神経分節に存在する。興味深いことに、この細胞は、全体節で同時に活動が上昇するburst活動と、引き続いて生じる尾側体節から頭側体節へ伝播する伝播活動の2つを示す。このことは、この神経細胞が、隣接した体節の活動の時空間的関係について、同期と伝播という異なるモードに関わることを示唆している。この細胞の機能を調べるために、コネクトミクス解析と遺伝学的手法によって下流の神経細胞の同定を進めた。現在までに、下流の神経細胞として抑制性の前運動神経細胞を同定している。興味深いことに、この下流の細胞は、通常高いカルシウム濃度を示すが、運動パターン発生に伴って一過的にカルシウム濃度が低下する。このことは、これらの回路が多彩な活動特性を持つことで、筋収縮の時空間的パターンを制御するを可能性を示唆している。以上の成果に基づき、今後体節間制御の神経回路について、回路構造や機能について解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で目標としていた体節間制御を担うと考えられる細胞の同定に成功した。今後、この細胞を起点として、回路の構造・機能について研究が進められると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
YT1介在神経細胞の関与する回路を詳しく解析するとともに、スクリーニングで同定された介在神経細胞について、コネクトミクス解析を進めることで、体節間制御の回路機構の網羅的解析を進める。また、後退運動に関しても回路の探索を引き続き進める。
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