研究課題/領域番号 |
20K06911
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 文隆 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00202044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 臨界期可塑性 / 発火順序 / バレル皮質 / 4層-2/3層 / 水平結合 / GABA細胞 / フィードフォワード抑制 |
研究実績の概要 |
大脳皮質感覚野は、発達の一時期にシナプス反応が入力依存性に変化する可塑性を示す事が知られ、この時期を臨界期とよび、このような可塑性を臨界期可塑性と呼んでいる。このような臨界期可塑性は、言語の習得や、音楽能力の獲得等とも関連が深いと考えられ、広く大脳皮質の学習とそのメカニズムを共有している可能性が高く、その発見当初より膨大な研究が成されてきた。我々はこれまでに、視床皮質投射、4層-2/3層のシナプスで、スパイクタイミング依存性可塑性が起こることを示してきたが、特に4層-2/3層のスパイクタイミング依存性可塑性(STDP)は臨界期の発現に特に重要な役割を果たすと想定されている。これまでに、4層-2/3層間のSTDPは生後12~15日(P12~15)以降に確立する事を示してきたが、4層-2/3層間の神経細胞が、感覚入力によって4層→2/3層順に発火するかどうかは調べられていなかった。本実験ではまずこの点を明らかにすることを目的としていた。今年度は、生後10日~20日までのラットを用いて、皮質体性感覚野の表層か深層までにわたる、32Chのシリコンプローブを用いてヒゲ刺激による反応を記録した。実験後、組織標本を作製し、記録部位と各電極の位置を推定し、生後発達のどの時期で、4層→2/3層順の発火になるかを検討した。結果はまだ解析中であり、確定的ではないが、少なくともP12以前では、4層→2/3層順発火は見られないことを示唆していた。今後、同様の実験を追加し、P12以後のどの時点で4層→2/3層順の発火に変化するかを明確にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年はコロナ蔓延のため、十分な実験の機会を得ることが大変困難であった。そのため、やや遅れているとの区分であるが、その中でも一定の結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
発達期のラットを使った実験を更に追加し、発火順序形成の発達に伴う変化を詳細に検討する予定である。一方で、2/3層間の水平結合における可塑性の発達の実験も追加する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナのために実験に制約があったこと、学会が開催されなかったこと等から予定していた物品の購入や、旅費等が消化できなかったが、次年度は、予定通り実験を実施し、また学会にも参加する予定なので、次年度使用額として繰り越した分を使用する予定である。
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