研究課題
大脳皮質感覚野は、発達の一時期にシナプス反応が入力依存性に変化する可塑性を示す事が知られ、この時期を臨界期と呼び、このような可塑性を臨界期可塑性と呼ばれている。このような臨界期可塑性は、言語の習得や音楽能力の獲得等とも関連が深いと考えられ、広く大脳皮質の学習と、そのメカニズムを共有している可能性が高く、この現象の発見当初より多くの研究室で幅広く研究が成されてきた。しかしながら、その全貌は未だに明らかにはなっていない。我々はこれまでに、視床皮質投射、4層-2/3層のシナプスで、スパイクタイミング依存性可塑性が起こることを示してきたが、特に4層-2/3層のスパイクタイミング依存性可塑性(STDP)は臨界期の発現に重要な役割を果たすと想定されている。そのような中、これまでに、4層-2/3層間のSTDPは生後12~15日(P12~15)以降に確立する事をスライス標本を用いた実験で示してきた。しかしながら、4層-2/3層間の神経細胞が、感覚入力にドライブされて4層→2/3層順に発火するかどうかは調べられていなかった。加えて、臨界期可塑性の発現には、隣接する2/3層間の水平方向のシナプス可塑性も重要な一因であると考えられるが、この発達も殆ど調べられてはいない。昨年、この点を纏めて論文投稿したが、レビューアーのコメントに従って、追加実験を行った。同時に、この実験中に、新たに大変興味深い関連するデータが得られ、これを早急に纏めて投稿したところ、大変良い返事が得られ、論文が受理された。このため、本実験の遂行が少し遅れたが、現在も追加実験を遂行中である。
3: やや遅れている
実績の概要で述べたように、予期していなかった興味深いデータが得られ、それについて論文を纏め投稿しめでたく受理された。このため、ほんじっけんはとうしょのよていよりややおくれているものの、追加実験は進行しており、当初の目的は達成できると考えている。
追加実験を完了して、再投稿出来る物と期待している。
論文が1つは受理されたが、予定していたもう1つの論文の受理が完了していないため、次年度使用額が生じた。本年は、論文受理に向けての追加実験と、論文投稿料として有効に使用する予定である。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 119 ページ: e2122700119
10.1073/pnas.2122700119
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2022/20220907_4