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2022 年度 実施状況報告書

発達期皮質神経回路形成におけるカンナビノイドの役割

研究課題

研究課題/領域番号 20K06913
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

伊丹 千晶  埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90392430)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード臨界期 / 可塑性 / カンナビノイド / 2-AG / 体性感覚野 / 大脳皮質 / CB1R
研究実績の概要

体感覚皮質の臨界期可塑性の研究は、視覚野を用いた研究により始まったが、他の大脳皮質にも臨界期があることが知られると、一般に大脳皮質の学習のメカニズムの基盤と想定され、膨大な実験を通して多くの関与する分子メカニズムも明らかにされたが、臨界期全体がどのような大枠の中で如何に進んでいくのかという全体像は依然として不明瞭なままにとどまっていた。このような中、我々は齧歯類のバレル皮質を用いて、生直後(P0)以降、視床皮質投射形成とその過形成からの退縮(P5以降)、P6以降の4→2/3層(L4→L2/3)投射形成に、それぞれ異なる神経活動と関与した可塑性、すなわち異なるスパイクタイミング依存性可塑性(STDP)が関与することを明らかにした。更に視床皮質投射の過形成からの退縮にはカンナビノイド受容体(CB1R)を介したSTDPが関与し、またP12-15以降、L4-L2/3シナプスでもCB1Rが関与したSTDPが出現することで臨界期が開始する事を示し、皮質内回路形成から臨界期開始に至るモデルを初めて提示する事ができた(Kimura and Itami, J.Neurosci, 2019, Viewpoints)。STDPのLTD成分は、視床→L2/3、L4→L2/3いずれのシナプスでもCBを介し、特に視床-L2/3投射ではeCBが投射制御に重要である事を明らかにしたが、eCBの実体は不明である。従来より、アナンダミドか、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)のいずれかで議論されているが、大脳皮質では結論は出ていない。そこで2-AGの合成酵素である、ジアシルグリセロールリパーゼアルファ(DGLalpha)を遺伝的に欠損する動物(DGLa-KO)を用いて、CB1依存性STDP-LTDが2-AG欠損下ではCB1依存性の現象が見られないかどうかを調べ、2-AGがeCBである可能性を検証する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では内因性カンナビノイド(eCB)の実体が2-AGであるかを明らかにするために2-AGの合成酵素であるDGLαを遺伝的に欠損したDGLa-KOマウスを用いて、STDPが誘導されるか否かを調べた。その結果、DGLa-KOでは、VB→L4、L4→L2/3のいずれのシナプスでもSTDP-LTDが誘導されなかった。このことから、体性感覚野のSTDP-LTDは、2-AGがeCBとして機能していることが強く示唆された。また、成熟動物の大脳皮質では、L4細胞はL2/3へ投射するが、大脳皮質に特徴的な円柱状投射を示し、カラム内の皮質2/3層へ特異的に投射する。この細胞は、P6頃から軸索を伸ばし始め、当初は白質方向に伸び、P8~9頃反転してターゲットのL2/3へ向かうが、この時は隣接カラムへ、時には更にその隣のカラムにまで枝を伸ばし、P15~16頃から次第に自己カラム内に収まりだす。ところが、DGLα-KOでは
成熟動物でも多くの細胞が、近傍のカラムに軸索を伸ばしたままである事を見出した。研究計画に示した実験はほぼ終了し、論文が受理された。

今後の研究の推進方策

これまでの結果から、大脳皮質のカラム構造の形成に内因性カンナビノイド(2-AG)が重要であることを明らかになったが、このようなカラムの形成過程には、動物個体の活動により誘発される末梢由来の神経活動は必要かどうかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

積極的に成果発表を行う予定であったが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言のため、国内外の移動が困難であり予算を消化することができなかった。次年度は、これまでに得られた結果をふまえて、大脳皮質のカラム形成に必要な神経活動を詳細に検討する。次年度の予算は、実験を行う際に必要となるマウスの購入および飼育費、プラスミド作製、遺伝子導入にかかる費用に使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Endocannabinoid-dependent formation of columnar axonal projection in the mouse cerebral cortex2022

    • 著者名/発表者名
      Itami Chiaki、Uesaka Naofumi、Huang Jui-Yen、Lu Hui-Chen、Sakimura Kenji、Kano Masanobu、Kimura Fumitaka
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 119 ページ: e2122700119

    • DOI

      10.1073/pnas.2122700119

  • [学会発表] Endocannabinoid-dependent formation of columnar axonal projection in the mouse cerebral cortex2022

    • 著者名/発表者名
      Itami C, Uesaka N, Huang JY, Lu HC, Sakimura K, Kano M, Kimura F
    • 学会等名
      Neurocsience 2022
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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