研究実績の概要 |
カラム構造は、大脳皮質の最も基本的な形態学的特徴のひとつであり、高等動物における情報処理の基盤であると考えられている。 しかし、このような局所的に精密な構造がどのようにして形成されるのかは、ほとんどわかっていない。第4層(L4)軸索の柱状投射の形成には視床皮質形成が先行しており、その際、1型カンナビノイド受容体(CB1R)が発生過程においてスパイクタイミング依存的な可塑性を操作することにより、バレル特異的な標的投射を形成する重要な役割を担っている(Itami et al. 36, 7039-7054, 2016; Kimura & Itami, J. Neurosci. 39, 3784-3791, 2019). 視床皮質投射の形成直後、CB1RはL4軸索終末で機能し始めるが(Itami & Kimura, J. Neurosci. 32, 15000-15011, 2012)、これはL4軸索の柱状形成のタイミングと一致する。ここでは、エンドカンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が、柱状形成に重要な役割を果たしていることを示す。L4軸索投射は、P12まではあまり組織化されておらず、CB1Rが機能するようになってから柱状になることがわかった。対照的に、2-AG合成の主要酵素であるジアシルグリセロールリパーゼαを遺伝的に欠損させたマウスでは、L4軸索の柱状構造は崩壊していた。CB1Rアゴニストを腹腔内に投与すると軸索の長さが短くなり、L4ニューロンのCB1Rをノックアウトすると軸索の柱状突起が障害された。 この結果を踏まえて、エンドカンナビノイドシグナル伝達が大脳皮質における柱状軸索投射の形成にどのような影響があるか調べた。
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