研究課題/領域番号 |
20K06918
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
堀尾 修平 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 特別協力研究員 (80145010)
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研究分担者 |
加藤 成樹 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90443879)
山形 聡 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (50769940) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 摂食調節 / 視床下部 / 室傍核 / CRF / CRH / 結合腕傍核 / 孤束核 / 青斑核 |
研究実績の概要 |
視床下部の室傍核は種々の摂食に関する情報が集積する摂食調節センターの1つである。室傍核には種々のタイプのニューロンが存在する。本研究では、そのうちCRFニューロンに注目し、そのニューロンを死滅させる実験を行った。その結果、マウスの摂食量、体重が有意に増加する結果が得られた。すなわち室傍核のCRFニューロンは正常時には摂食を抑制するという調節を行っていると考えられる。しかし、室傍核のCRFニューロンは脳内の様々な部位に神経投射しており、そのうちのどのCRFニューロンが摂食調節に関与するのか明らかでない。本研究では、CRFニューロンをその脳内投射部位により分類するという新しい方法を用いている。それらの投射部位に逆行性ウイルスベクターを注入し、室傍核にDTAを発現するウイルスベクターを注入することにより、特定の脳部位に投射するCRFニューロンのみを死滅させる実験を行った。その結果、脳幹に投射する一部のCRFニューロンが摂食抑制に関与することが明らかとなった。また、その脳部位にFLPを発現する逆行性ウイルスベクターを注入し、FLP依存性にGFPを発現するウイルスベクターをPVHに注入することにより、このCRFニューロンのみにGFPを発現させることができた。これらの結果は、視床下部室傍核に存在する、ある特定のCRFニューロンが摂食抑制に関わっていることを示している。さらに、そのニューロン特異的にGFPを発現させることが可能であることから、そのニューロンの様々な性質を明らかにする実験が可能となった。またGFPに加えて、その他の任意のタンパク質を選択的に発現させることも可能であり、そのニューロン機能を生理学的に調べることも可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視床下部室傍核のCRFニューロンが摂食調節に関与するかどうか、世界的にみて疑問視する考えもあったが、本研究では、このニューロンの摂食調節への関与を明確に示した。さらに、特定の脳部位に投射する室傍核CRFニューロンが摂食調節に関与することを示す結果を得た。また、そのニューロンに特異的に、GFPを始めとして種々の任意のタンパク質を発現させることが可能な実験系を構築した。以上に示したとおり、初期の計画通り順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.現在までに、視床下部室傍核のCRFニューロンが摂食抑制に関わること、このCRFニューロンは均一ではなく様々なタイプに分けられること、それぞれのタイプのニューロン群は異なる脳部位に投射していることを明らかにした。 2.さらに、摂食抑制に関与するのは、そのうちの脳幹部位に投射する一群のニューロンであることを示す結果を得た。 3.そこで本研究では、この摂食抑制に関わるCRFニューロンに的を絞ってさらに研究を進める。 4.標的としているCRFニューロンに特異的にGFPを発現させることが可能となったので、免疫染色法を用いて、そのニューロンの性質を詳しく調べる。また、種々の生理的条件を変化させて、標的CRFニューロンの活動状態を示す指標であるcFos量を測定し、このニューロンが活性化される、あるいは抑制される、生理的条件を明らかにする。 5.この標的ニューロンに特異的に、任意のタンパク質を発現させることが可能になったので、それを利用した様々な実験を予定している。例えば、チャネルロドプシン2を発現させて、光を当てることによりニューロンを活性化させ、摂食行動への影響を調べる実験などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、ウイルスベクターの利用が不可欠であり、ウイルスベクターの作製は主として研究分担者の加藤成樹博士が担当している。本年度は研究の予想以上の進展があった場合に対応できるように余裕を持って経費を用意したが、研究の進展具合はほぼ予定通りであったため、次年度使用額が生じた。この額は、次年度のウイルスベクター作製の費用に充当する予定である。
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