研究実績の概要 |
本研究課題は双極性障害モデルマウスにおける視床室傍核(paraventricular nucleus of thalamus, PVT) の異常を1細胞レベルで解析し、気分調節に関わる神経回路を解明することを目的としている。 PVTのセルタイプを同定するため、野生型マウスのPVTを単一細胞RNAseq(scRNAseq)を用いて解析した。その結果、主成分解析の第1主成分の遺伝子発現が、PVTの前部(anterior PVT, aPVT)と後部(posterior PVT, pPVT)の遺伝子発現差に対応しており、PVTの遺伝子発現は前後軸に沿って連続的に変化することがわかった。PVTの細胞は主に4種に分類でき、それぞれのセルタイプの空間分布と遺伝子発現の連続性を多色蛍光in situによって確認した。さらに、aPVTとpPVTに発現を持つCreライン(Ntrk1-Cre, Drd2-Cre)を用い、それぞれの軸索投射パターンを2光子トモグラフィ顕微鏡を用いて全脳にわたり解析した。その結果、両者の軸索投射領域はほぼ重ならず、相補的な軸索投射をしていることがわかった。aPVTとpPVTは摂食行動に関わるペプチドホルモンの受容体(オレキシン受容体、メラミン活性化ホルモン受容体)発現パターンが異なっており、それらペプチドホルモンに対する反応の違いを電気生理で確認した。また、DREADDを用いた神経活動の活性化により、aPVTとp PVTが摂食行動を正反対に制御することを示した。上記の結果をまとめ、論文を投稿している。また、bioRxivに同内容を公開した。さらに、双極性障害モデルのPVTのscRNAseq解析に着手している。
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