研究課題
統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状、感情鈍麻や自発性減退などの陰性症状を呈する精神疾患である。そのような症状は脳の機能異常によって起こると考えられるが、その本態をなす生物学的基盤はまだ明らかになっていない。本研究は、システム神経科学的アプローチで、統合失調症において顕著な異常が起こり、認知機能や社会機能と関連し、ヒトと非ヒト霊長類の両方に共通して存在する視覚認知行動に着目し、認知行動課題を遂行しているヒトと非ヒト霊長類の眼の動きと脳活動を調べることによって、病態を引き起こしている脳の視覚認知機能メカニズムにおける機能不全の詳細の解明を目指す。2023年度は前年度に引き続き、ヒトおよび非ヒト霊長類を対象とした研究、機能的磁気共鳴画像法を用いた研究、研究代表者らが計測・集積してきた精神疾患の視覚認知機能及び脳画像のデータを用いた研究を並行して進めた。統合失調症をはじめとする精神疾患における脳構造の異常及び、統合失調症における脳構造の経時的変化と認知機能の変化との関連を示した研究成果がMol Psychiatry誌、Neuropsychopharmacol Rep誌などに掲載された。また、視覚認知行動異常が統合失調症を検出するバイオマーカーになることや、統合失調症の視覚認知行動異常の背景に視覚サリエンス処理の障害があることを示した研究成果がPsychiatry Clin Neurosci誌、Sci Rep誌などに掲載された。統合失調症における視覚サリエンス障害が他の精神疾患に比べて特に顕著であることを示し日本生物学的精神医学会年会などで報告した。また、機能的磁気共鳴画像法で明らかとなった視覚認知行動関連脳部位の皮質構造と精神疾患の眼球運動異常との関連、統合失調症モデル動物の作出などをまとめた研究成果を国内シンポジウムで報告した。
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神疾患病態研究部https://byoutai.ncnp.go.jp/
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Scientific Reports
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