研究課題/領域番号 |
20K06923
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田村 了以 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (60227296)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 霊長類 / 海馬 / 3次元環境 / 場所細胞 / サル / データーロガー / 自由行動下 / ニューロン活動 |
研究実績の概要 |
O’Keefe による海馬場所細胞の発見以来,げっ歯類の海馬における空間認知の神経基盤に関する研究は数多く行われてきたが,霊長類の海馬場所細胞に関する知見は極少数しかない.本研究の目的は,内部構造のある3次元環境内を移動しているサルの海馬からニューロン活動を記録し,動物の移動方向(水平方向 と垂直方向)と場所応答性との関係を明らかにすることである.従来の信号伝送ケーブルを介した神経活動記録は,サルが複雑な構造のある3次元環境内を移動する邪魔になるという問題点がある.そこで本年度は,まず,本研究代表者が最近開発した電池駆動のデータロガー(4チャネルの入力,160~10,00 Hzバントパスフィルター,2,000倍の増幅率,チャネル当たり50 kHzでAD変換,SDカードにデータ保存)を小型軽量・省電力化するため,電子部品を省電力の表面実装品に変更し,専用に設計したプリント基板上に配置して作製した.その結果,これまでは電池を含めると約200 gの重量で約200 mAh(リチウムイオン電池の消費電力から計算)の消費電力であったものが,約80 gで150 mAhまで小型軽量・省電力化された.次に,水平方および垂直方向が2.4 mの3次元環境(移動空間)を金属製アングル,アクリル板および塩ビパイプを用いて作製し,そこにペレットディスペンサーを設置してサルが報酬(餌)を獲得できるようにした.3次元環境が完成後に,サルにこの環境内を移動する行動課題(水平・垂直移動課題)を訓練した.現在サルは,この行動課題を30~60分継続して行うようになり,神経活動記録実験に移ることができる状況となっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、大学への出勤の自粛が求められた時期があり、また、教育業務(オンラインコンテンツの新規作成)が極端に増加したため、実験の実施が遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、データロガーの改良、3次元環境の構築、および、サルの行動訓練はほぼ終わり、ニューロン活動記録実験に移行できる状況となっている。実験実施のための人的資源も確保できたので(サルを用いたニューロン活動記録実験に精通している特命助教の採用が決まり、5月または6月中に着任予定)、当初計画から遅れている記録実験を強力に進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,実験が当初の計画通りには実施できずかなりの遅れが生じた.それに伴って人件費・謝金をはじめとして,直接経費の各費用も当初計画より少なくなった.また同様に,研究打ち合わせや学会参加もオンラインで行うことになり,旅費としての支出もなかった. 使用計画:計画している実験の施行を速める目的で,研究に専念できる特命助教を採用することが決まり,その人件費の一部にこの研究費を充てる.
|