研究課題/領域番号 |
20K06924
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
渡部 美穂 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10399321)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | GnRHニューロン / GABA / 生殖 / KCC2 / 視床下部 |
研究実績の概要 |
多数のGnRHニューロン間で周期的に活動が同期することがGnRH分泌様式の基盤となる可能性を考え、活動の指標として自発的なカルシウム上昇を記録し、解析を進めている。栄養状態の低下により生殖機能が低下した時のGnRHニューロンの同期活動の変化を検討するために、食事制限ストレスの方法を確立した。マウスに60%食事制限(通常の60%量の餌を10日間与える)を負荷したところ、負荷2日後より体重が減少し、10日後には25%の体重減少が認められた。食事制限の負荷により、ストレス負荷時に活性化されるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)ニューロンでc-Fosの発現が認められ、血中コルチコステロンの上昇が認められた。空腹時に活性化されるアグーチ関連ペプチド(AgRP)ニューロンでもc-Fosの発現が認められたことから、食事制限ストレスの方法を確立できた。 また、GnRHニューロンの同期活動の性周期や性成熟に伴う変化、ストレス負荷時の同期活動の変化を個体レベルで検討するために、マウス視床下部のin vivo Ca2+イメージングの方法の確立を共同研究者の協力で行った。GnRHニューロンでカルシウムセンサーであるGCaMPを発現するマウスの頭蓋骨に穴をあけ、Gradient refractive index(GRIN)レンズを埋め込み、デンタルセメントで固定し、GnRHニューロンの活動のin vivo Ca2+イメージングによる記録を進めている。 GnRHニューロンでGCaMP6fを発現するマウスから視床下部スライス標本を作成し、活動の指標として自発的なカルシウムの上昇の記録を進めているが、GnRHニューロンでのGCaMPの発現が弱いため、マウスのホモ化やスライス標本の状態をより良くするために、スライス作成時にNMDG溶液を使用、インターフェースチャンバーを使用するなど検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
栄養状態の低下がGnRHニューロンの活動の同期性に変化をもたらすか検討するための、食餌制限ストレスの方法を確立することができた。また、GnRHニューロンのうち何パーセントのニューロンの活動が同期することでGnRH大量分泌やパルス状分泌を引き起こすのか、同期活動に性成熟、性周期に伴う変化、栄養状態の低下が同期活動にどのような変化をもたらすかを個体レベルで検討するために、マウス視床下部のin vivo Ca2+ imagingの方法を確立できた。
|
今後の研究の推進方策 |
GnRHニューロンが示す自発的なカルシウム上昇を記録するために、GnRH-tTA::tetO-GCaMP6fマウスの使用およびGnRH CreマウスにCre依存性にGCaMP6fを発現するAAVをインジェクションするという方法により、GnRHニューロンでGCaMP6fを発現させているが、GnRHニューロンでGCaMP6fを十分に発現させるために、マウスのホモ化や急性スライス標本の作成方法の工夫を行う。栄養状態の低下により生殖機能が低下した時にGnRHニューロンの活動の同期性に変化がみられるか、食事制限ストレスを負荷したマウスの脳スライス標本を用いて、GnRHニューロンより自発的なカルシウム上昇を記録し、その頻度、同期を示す細胞数についてMATLABを用いて解析を行う。さらに、GnRHニューロンへの興奮性GABA入力がGnRHニューロンの同期活動に関与しているか検討するために、GnRHニューロンでGCaMPとKCC2を発現させたマウスを用いて、GnRHニューロンへのGABA入力を興奮性から抑制性に変化させた時に自発的なカルシウム上昇およびその同期性に変化がみられるか調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験に遺伝子改変マウスを使用しており、繁殖がうまくいかない時期があり、実験に使用するマウスが十分に得られず、マウスの飼料代やジェノタイピングに関する試薬費が次年度使用となった。次年度のマウスの飼料やジェノタイピングに関する試薬の購入に使用する計画である。
|