本研究の目的は、能動的/受動的嫌悪反応の選択における島皮質の役割を神経回路レベルで解明することであった。これまでに、島皮質から皮質下領域への出力経路として、2つの経路(経路AおよびB)に着目してきたが、本年度の研究過程において、第3の異なる経路(経路C)を有する細胞群を明らかにするに至った。これらの細胞群の情動行動における役割を明らかにするため、光遺伝学的手法を用いて細胞群の刺激に対する欲求行動への影響を調べた。その結果、経路Aを有する細胞群の刺激では、欲求行動が減少したのに対し、経路Aを有する細胞群を含まない場合(B+C)では、欲求行動が促進される傾向を得た。一方、嫌悪性(嗜好性)への効果を調べるため二肢選択テストを行ったところ、経路Aを有する細胞群の刺激によって嫌悪性は見られなかった。このことから、経路Aを有する細胞群(およびその経路)は、嫌悪性に非依存的に欲求行動の抑制に関与することが示唆された。 以上のことを踏まえて、今後の方針として、上記3つの経路をそれぞれ有する島皮質細胞群が、欲求に基づく能動的行動および受動的反応にどのように寄与しているかという観点で研究を継続していこうと考えている。
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