研究実績の概要 |
最終年度であるR4年度においては、学会・研究会発表(Neuro2022-沖縄、Development and Plasticity of the Brain-伊勢、統合的脳神経科学・SIMo研究会-熊本)、論文作成および投稿を行い、プレプリントサーバーに掲載した(Takemoto et al., BioRxiv, 2022)。さらに、査読論文のリバイスにおける追加実験として、第5層サブレイヤーニューロン群の光遺伝学的刺激による不安様行動の発現の有無について、オープンフィールドおよび高架式十字迷路を用いた解析を行った。結果として、いずれのサブレイヤー刺激も有意な効果は見られなかったことから、給水ノズルの二者選択試験の結果から示唆される考え(飲水行動の調節が情動反応に起因するものではない)を支持するものとなった。
研究期間全体を通じて、マウス島皮質の第5層における2つのサブレイヤー(L5aおよびL5b)が嫌悪反応に関わるという申請時の仮説を支持する結果とはならなかったが、動機付け行動のひとつである渇水時の飲水行動において、L5aニューロン群の活性化は行動抑制、L5bニューロン群の活性化は行動促進に寄与し、この行動調節は情動反応(嗜好および嫌悪)に起因するのではなく、モチベーションの調節によることを見出した。また第5層サブレイヤーニューロン群は味覚野を包含する島皮質(不全顆粒性島皮質)の前後軸全域に分布することから、味覚(甘味・苦味など)に固有の行動調節機構ではなく、味覚に依存しない様々な内的・外的要因による摂食・飲水行動調節に関与する可能性が示唆された。
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