研究課題/領域番号 |
20K06929
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
冨田 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (60276251)
|
研究分担者 |
畝川 美悠紀 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (10548481)
伊澤 良兼 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90468471)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | オプトジェネティクス / 脳微小循環 / Neurovascular unit / 脳虚血 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
脳内ではニューロン・グリア細胞・微小血管は神経血管連関(Neurovascular unit (NVU))を形成し、相互に連絡を取り合っている。NVUを構成するニューロン、アストロサイト、血管平滑筋、ペリサイトなどの脳微小循環調節における役割を解明するため、オプトジェネティクス手法を用いてNVUを構成する特定の細胞種だけに光感受性膜タンパク質・チャネルロドプシン2(ChR2)を発現させたマウスを用い、非侵襲的に細胞特異的に光刺激を加えて細胞を賦活し、脳微小循環調節機序を詳細に検討することを目的とする。 ChR2をニューロンあるいはアストロサイトに発現させたマウスをウレタンで麻酔し、頭蓋上に波長460nmの光を照射することによって当該細胞のみを賦活化し、レーザースペックル血流計を用いて大脳半球表面の血流を連続的に記録した。光刺激によりいずれも光強度依存的に脳血流は増大し、照射部位より広範囲への伝播が認められた。薬理学的手法により、血流調節に関わる機序が異なることを明らかにした。さらに、二光子顕微鏡を用いて脳微小血管の挙動を検討した。水銀ランプの照射により、脳表軟膜動脈および実質内穿通動脈の口径変化を解析した結果、アストロサイト刺激時は脳表から実質内動脈で一様に拡張したが、ニューロン刺激時には脳表動脈と比較し実質内動脈でより顕著に拡張することを明らかにした。次に血管平滑筋(PV-ChR2)あるいは血管平滑筋とペリサイト(NG2-ChR2)にChR2を発現したマウスを用い、光照射によって脳血流の低下とその伝播、動脈の顕著な収縮反応を確認した。二光子顕微鏡下で単一細胞に光刺激を行い、収縮と伝播を観察した。さらに、直径4μmの蛍光マイクロビーズを静脈内投与し、毛細血管分岐部で一時的に停止する微小塞栓現象を見いだし、当該マウスで光照射時に主に静脈側でその現象が増大することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定した発現を呈する遺伝子組換えマウスが一時減少して実験が中断することもあったが、その後順調に供給されるようになった。例数も増えて実験はほぼ終了し、論文化に向けて準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで使用してきたマウスはペリサイトと血管平滑筋にChR2を発現したものであった。最近、研究協力者の田中謙二教授らによりペリサイトのみにChR2を発現したマウスの作成に成功した。血管平滑筋が賦活することによる血管収縮が強く観察されていたことから、ペリサイトのみに発現したマウスを用いて血流動態に対するペリサイトの効果を検証する予定である。ペリサイトの血管収縮機能についてはまだ議論されている段階であり、本研究によってペリサイトの生理機能の解明に寄与すると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会・論文発表に向けて学会参加、英文校正、投稿に要する費用に対して使用するとともに、これまでに確立した手法を用いて新たな系統のマウスを用いて実験を行う予定である。
|