本研究は、自然免疫型T細胞の機能を制御するケミカルツールの創製を目的としている。本年度も昨年度に引き続き、様々な疾患への関与が指摘されているmucosa-associated invariant T(MAIT)細胞とCD1a拘束性T細胞に着目し、それらの制御を担うMR1やCD1aタンパク質に作用するリガンド分子の探索を実施した。 (1)MR1タンパク質に作用するリガンドの探索:昨年度に開発したMR1リガンド探索のためのハイスループットスクリーニング系を用いて取得したヒット化合物について、構造展開を行った。ヒット化合物の各種誘導体を合成し、評価することで、活性に重要な部分構造の同定を行った。また、ヒット化合物と誘導体に対して、計算化学の手法を用いて結合モードの解析を行いMR1との相互作用に関する情報を得た。 (2)CD1aリガンド探索のための評価系構築:昨年度に引き続きCD1aリガンドを評価するためのアッセイ系の構築を検討した。CD1aを発現する抗原提示細胞とT細胞モデルによる共培養系を用いて、CD1aを介したT細胞活性化を評価する系を構築した。また、CD1aとリガンドとの相互作用を検出する評価系の構築も併せて行った。 (3)リポペプチドDDM838からの構造展開:CD1aリガンドとして知られるリポペプチドDDM838の構造を元に構造展開を実施した。昨年度に引き続き各種誘導体を合成した。(2)で構築した評価系を用いて活性評価を行った結果、活性発現に関わる鍵構造を同定することに成功した。
|