研究課題/領域番号 |
20K06946
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
浅川 倫宏 東海大学, 海洋学部, 准教授 (80571257)
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研究分担者 |
谷口 透 北海道大学, 先端生命科学研究院, 講師 (00587123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | C-H挿入反応 / ソホラフラバノン / 全合成 / 絶対立体配置決定 / フラバノン / ジヒドロベンゾフラン / ロジウム(II)触媒 |
研究実績の概要 |
本年度はジヒドロキシベンゾフェノン骨格を有するソホラフラバノンHの全合成研究を行った。その結果、ロジウム(II)触媒による不斉C-H挿入反応を用いて主骨格を形成し、次にフラバノン骨格を構築することでその全合成を達成した。 ソホラフラバノン Hは、フラバノン骨格と 2,3-ビアリールジヒドロベンゾフラン骨格が連結した複合型天然物である。それぞれの骨格を単独で有する化合物からは見られない特異な生物活性を示し、その特徴的な構造と生物活性との相関に関心が寄せられ、創薬シーズとして期待されている。 合成において、まず安息香酸誘導体より導かれるビアリールジアゾメタンに対し、不斉ロジウム(II)触媒を用いた不斉 C-H 挿入反応によって、ジヒドロベンゾフランを数十グラムスケールで合成した。再結晶精製によって光学純度が向上し、X線結晶構造解析での絶対立体配置の決定を行った。これにより、ロジウム(II)触媒を用いたC-H挿入反応が、本骨格構築に有効であることを示した。次に、アルデヒドへの変換とアルドール縮合によりカルコンとし、リバースプレニル化により望みの位置にプレニル基を導入後、分子内環化反応によりフラバノン骨格を構築した。本法は、天然にも多く存在するプレニルフラボノイドの合成法として汎用性が高いことが期待される。最後に、ジアステレオマーを分離後、酸処理によりすべての保護基を除去しソフォラフラバノンHの全合成を達成した。また、分担者によって計算科学を用いたCDスペクトル予測値と実測値の比較が行われ、、その絶対立体配置を確定した。本合成では、ソフォラフラバノンHのジアステレオマー合成も行うことができ、構造活性相関研究へと展開することを予定している。 また、C-H挿入反応の検討に用いる反応基質であるジアゾメタン化合物の新規酸化剤による合成方法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度から続く新型コロナの影響で化学実験を行う時間の確保に問題が生じた。その間、ソホラフラバノンHの合成実験を進め、分担者の手により当初の予定通りその絶対立体構造を明らかにでき、論文化に至った。2020年度後半になり、状況が改善したことから、含窒素、含硫黄多環式構造の構築の検討を始めた。まずはじめにC-H挿入反応を検討するための基質合成を行った。現在進行中であるが、酸化段階の調節などの問題点が浮上し、現在検討を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
現在検討中である含窒素化合物の合成を中心に進める予定である。すなわち、C-H挿入反応前駆体であるジアゾメタン誘導体を、新たに開発した酸化方法を用いて合成する。本酸化反応に用いる試薬は酸化能を有する水和物であり、反応後に無害なありふれた塩を排出するのみであり昨年度から開発していた。従来の毒性重金属廃棄物や嵩のある廃棄物が出ない環境調和型の方法であり、ジアゾメタン構造を持つ化合物の合成に大きな寄与を果たすと期待される。現在その基質の適用性について検討を行っており、望みの基質合成を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は実験器具と安定な試薬の購入を優先した。実験期間が従来の半分しか確保できなかったため次年度に繰り越した。2021年度は当初の予定である触媒の購入と大型の装置の導入を行う予定である。
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