研究実績の概要 |
22年度は2,3-ジ置換インドリンの新規合成法を検討し、C-H 挿入反応が有効であることを見出した。C-H 挿入反応による立体選択的な2,3-二置換インドリンは、対応するジアゾ化合物から変換することとし、ジアゾ化合物の合成を試みた。当初、窒素官能基の導入には、ベンジルアミドとアリールブロミド等とのクロスカップリングにより合成する予定であった。しかしながら、カップリング反応は進行しなかったため、新規ルートでの基質合成を検討した。その結果、あらかじめ窒素官能基を有する2-アミノジフェニルケトンから合成することで目的の反応基質を得た。2-アミノジフェニルケトンに対し、任意のベンジルブロミドにてアルキル化を行ったのち、得られるベンゾフェノンを酢酸存在下、無水ヒドラジンを反応させることでベンゾフェノンヒドラゾン誘導体 とした。続く二酸化マンガンでの酸化により赤色化合物のジフェニルジアゾメタン年、C-H挿入反応前駆体を得た。そして、Rh (II) 触媒による環化反応を試みたところ、インドリン誘導体の生成が確認された。 本研究課題を通じて、申請者はロジウム触媒を用いたC-H挿入反応による2,3-ジ置換多環式複素環構築反応の応用による天然有機化合物の合成と新規合成法の開発を行った。抗ウイルス活性を有するソホラフラバノンHの立体選択的合成を、不斉C-H挿入反応をカギとして、その中心骨格である2,3-ジ置換ジヒドロベンゾフランを構築し16段階での合成を達成した。本合成法は立体異性体やフラボン骨格を持つ構造類縁体の合成も可能であり、構造活性相関研究にも寄与できるものであった。また、C-H挿入反応による2,3-ジ置換インドリン骨格の構築に成功し、同構築法を用いて、類縁体への適用を検証している。
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