研究実績の概要 |
2017年にスピロ環を含む新規多環式メロテルペノイドであるマンギノイド類が新たに単離、構造決定された。生物活性試験の結果、マンギノイド A が特に高い11β-HSD1阻害活性 (IC50 = 0.84 μM)を有することが明らかとなった。11β-HSD1阻害剤は二型糖尿病などの生活習慣病に対する治療薬として注目されている化合物である。そこで新たに単離されたマンギノイド類のより詳細な生物活性試験のための試料供給と天然物よりも優れた活性を有する化合物の創出を目的とし、誘導体合成へと適応可能な収束的合成経路の確立を目指し研究を行った。まずは研究実施計画に基づきマンギノイド類の鍵骨格であるスピロ環を含む三環性化合物の構築法の確立を目指した。テルペン部位に相当する光学活性な五員環化合物とポリケチド部位に相当するC2対称性を有するキラルジケトンとのスピロ環構築について検討した。当初計画していたエポキシド部位を有する五員環化合物を用いた、Knoevenagel縮合とおよび1,4-還元、続く活性メチン部位からのエポキシドへの求核攻撃をワンポットで行うスピロ環部の構築は実現できなかった。しかしながら、五員環化合物の有する官能基を変更したのち、二つの化合物をKnoevenagel縮合と続く1,4-還元により結合させることに成功した。その後活性メチン部位からのアルデヒドへの求核付加反応により、スピロ環部の構築を実現することができた。
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