研究課題/領域番号 |
20K06951
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
小林 健一 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (30639282)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Talaramide A / Rubrobramide / Berkeleyamide D / Euvesperin A / Euvesperin B / L-755,807 / Aβ凝集阻害剤 / BACE1阻害剤 |
研究実績の概要 |
1. Aβ凝集阻害剤の開発 Talaramide A、Rubrobramide、及びBerkeleyamide Dの合成研究:Talaramide AとRubrobramideの全合成を達成した。アルデヒドとブロモマロン酸エステルとのジアステレオ選択的なDarzens反応を鍵反応としてエポキシジエステルを合成し、共通構造のビニロガスエステル中間体へと誘導した後、6-endo-環化を選択的に進行させることにより、2つの天然物を効率的に得ることができた。合成した化合物のスペクトルデータは天然物のものと一致し、Talaramide AとRubrobramideの相対及び絶対立体配置を合成化学的に確定することができた。 Euvesperin A及びBの合成研究:環部セグメントと側鎖部セグメントのカップリングを検討した結果、Horner-Wadsworth-Emmons反応は進行しなかったが、Weinrebアミドとビニルリチウムとの反応は低収率ながら進行し、天然物の全炭素骨格を有する合成中間体を得ることができた。 L-755,807の構造活性相関研究:L-755,807の環部に相当する化合物2つと側鎖部に相当する化合物3つをそれぞれ合成して、Aβ凝集阻害活性を評価した。その結果、天然物の環部類縁体はいずれもほとんど活性を示さなかった。一方、テトラエン構造を有する側鎖部類縁体のうち、エチルエステル体は活性を示さなかったものの、カルボン酸は天然物とほぼ同等の活性を示し、アルコール体は天然物の3倍程度強い活性を有することを明らかにした。 2. BACE1阻害剤の開発 以前見出した尿素骨格を含むBACE1阻害活性化合物をシード化合物として、数種の誘導体合成を行い、BACE1阻害活性を評価した。その結果、ジブチルアミンから誘導した末端アミド誘導体が最も強い阻害活性を示し(IC50 = 0.27μM)、もとの化合物から25倍程度活性を増強させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. Aβ凝集阻害剤の開発 Talaramide A、Rubrobramide、及びBerkeleyamide Dの合成研究:当初の計画通り、ビニロガスエステル中間体の6-endo-環化を選択的に進行させる条件を見出し、2つの天然物の全合成を達成できた。Talaramide AとRubrobramideの不斉全合成は世界初であり、十分な研究成果を得た。また本研究は、これら天然物の絶対立体配置を合成化学的に確定した最初の例である。 L-755,807の構造活性相関研究:合成したL-755,807の環部類縁体2つはいずれもAβ凝集阻害活性を示さず、側鎖部類縁体のうちカルボン酸とアルコール体が強力な阻害活性を示したことから、活性発現には疎水性の共役炭素鎖と末端の親水性官能基の組み合わせが重要であることを明らかにした。 2. BACE1阻害剤の開発 尿素骨格を含むBACE1阻害活性化合物をシード化合物として、末端アミド部に関する誘導体合成と生物活性評価により、N,N-ジブチルアミド誘導体に強力なBACE1阻害活性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1. Aβ凝集阻害剤の開発 Talaramide A、Rubrobramide、及びBerkeleyamide Dの合成研究:Talaramide Aの合成に用いたビニロガスエステル中間体からの5-exo-環化を検討し、Berkeleyamide Dの全合成を目指す。また、Rubrobramideの合成中間体からも同様の環化反応を検討して、非天然型の類縁化合物を合成する。さらに、合成した化合物のAβ凝集阻害活性試験を実施し、天然物創薬に向けたリード探索を行う。 Euvesperin A及びBの合成研究:2020年度の検討で天然物の全炭素骨格を有する中間体を合成できたが、収率が低かったため、環部と側鎖部のカップリングを再度検討する。また、カップリング体から天然物への誘導化を検討する。 2. BACE1阻害剤の開発 2020年度に引き続き、種々の類縁体合成とBACE1阻害活性評価を行い、構造活性相関の解明を目指す。
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