研究実績の概要 |
Euvesperin A及びBの合成研究:前年度までにeuvesperin Aのアミナール体を得ることができたが、側鎖部のジアステレオマーを分離できなかった。そこで、側鎖のエノン部位を還元した後に向山水和反応を行ったところ、側鎖部のジアステレオマーを分離することができた。分離したジアステレオマーをそれぞれ酸化及び加水分解することで、euvesperin Aとして可能性のある4種の立体異性体の合成に成功した。 合成品と天然物のNMRの比較から、天然のeuvesperin Aは(2R,3R,4S,7S)-体と(2S,3S,4R,7S)-体の混合物であることが判明した。これにより、ヘミアミナール部位に関するジアステレオマー混合物として報告されていたeuvesperin Aの構造は誤りであることが明らかとなった。また、得られたeuvesperin Aを塩基で処理することで、euvesperin Bとして可能性のある2種の立体異性体を合成した。Euvesperin Aと同様に、報告されていたeuvesperin Bの構造は誤りであり、天然物は(2R,3S,4S,7S)-体と(2S,3R,4R,7S)-体の混合物であることが判明した。 なお、合成した天然物及びその立体異性体についてアミロイドβ凝集阻害活性を評価したが、いずれもほとんど活性を示さなかった。 BACE1阻害剤の開発:高活性なN,N-ジブチルアミド誘導体について、前年度までにシクロヘキサン環部に関する両ジアステレオマーの立体選択的な合成はできなかったため、ジアステレオマー混合物として合成を進め、最終生成物での分離条件を種々検討したところ、ジアステレオマーの分離に成功した。 両ジアステレオマーのBACE1阻害活性を評価した結果、活性に10倍程度の差があることが明らかとなり、シクロヘキサン環部の立体化学が活性に大きな影響を与えることが分かった。また、マウスを用いた活性評価も行った。効果を示す個体と示さない個体があったため、統計的に有意差があるかを判断するには、ある程度の個体数が必要になると考えられた。
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